Googleの内部クエリ分類から見る、AI Overviewsが出やすい検索・出にくい検索
著者:喜多 陽平 / Kita Yohei 公開日:2026年8月14日
普段Google検索をしていて、あるクエリではAI Overviewsが出てくるのに、別のクエリでは出てこない、ということに気づきました。「Salesforce」と打っても出ないのに、「Salesforceとは」と打つと出る。同じ単語を含んでいるのに、結果がまるで違う。これはどういう理屈なのか、海外の調査データを追いかけてみました。
そもそもAI Overviews(AIによる概要)とは、Google検索結果の上部に、AIが複数のウェブページを要約して表示する回答枠のことです。2024年5月に米国で本格展開され、現在は世界各国に広がっています。
Googleは検索クエリを、裏側でこう分類している
調べていて一番面白かったのは、Ahrefsが2025年9月に1億4,600万件のSERPを分析した調査です。この調査、実は少し変わった経緯で作られています。SEO関係者がGoogleに対するセキュリティのバグバウンティ調査を行った際、Googleが検索クエリを内部的に分類するために使っている「クエリ分類器」の存在が偶然見つかったのです。定義・理由・真偽・比較・手順・結果・事実確認・その他という8つのカテゴリで、Googleはあらゆる検索を裏側で仕分けています。
Ahrefsはこの8分類ごとに、実際のAI Overviews出現率を集計しました。
※公開情報をもとに自社で作成(出典:Ahrefs「What Triggers AI Overviews?」2025年9月・1億4,600万SERP分析)
※「その他」はグラフ枠の都合上、バーではなくテキストのみで記載
最も出現率が高いのは「なぜ〇〇なのか」を問う理由型(59.8%)でした。次いで「はい/いいえ」で答える真偽型(57.4%)、「〇〇とは」の定義型(47.3%)と続きます。意外だったのは、比較型が26.2%と、8カテゴリの中では下から2番目に低かったことです。「比較検索はAIに答えさせやすい」という直感的なイメージとは、実は逆でした。
「Salesforce」と「Salesforceとは」の差は、こう説明できる
この分類とは別に、Ahrefsは検索意図(インフォメーショナル・ナビゲーショナル・商業・トランザクション)別のデータも出しています。ここに、冒頭の疑問への答えがあります。
ナビゲーショナル(特定のサイトに行きたいだけの検索)でAI Overviewsが出現する割合は、わずか0.09%でした。1万件に9件も出ない計算です。「Salesforce」とだけ打つ検索は、まさにこのナビゲーショナル型です。Googleからすれば、要約を挟む意味がなく、公式サイトに直接送ればいいだけの話だからでしょう。
一方「Salesforceとは」は、社名を含んでいても、意図としては定義を尋ねるインフォメーショナル型(全体平均21.4%、しかも定義型なら47.3%)に分類されます。同じ単語を含んでいても、Googleが読み取る「意図」が違えば、出現率はまったく別物になるということです。
さらに、ブランド名を含まない検索は、含む検索の1.9倍の頻度でAI Overviewsが出現していました(非指名24.9% vs 指名13.1%)。これも同じ理屈で説明がつきます。ブランド名を含む検索の多くは、すでに行き先が決まっているナビゲーショナル型に寄りやすいということです。
語数が長くなるほど出現率も上がる
クエリの単語数との相関も明確でした。単語1つのクエリでは9.5%だったのが、7語以上になると46.4%まで上がります。Pew Research Centerが2025年3月に実際のユーザー900人のブラウジング行動を追跡した調査でも、同じ傾向が確認されています。1〜2語の検索では8%だったのに対し、10語以上では53%。「who/what/when/why」で始まる疑問形の検索では60%という数字も出ており、Ahrefsの「理由型59.8%」とほぼ一致しています。別々の調査手法で、近い数字が出ているという点は、この傾向の信頼性を裏付けていると思います。
医療系クエリほど、むしろAIが答えたがるという逆説
もう一つ意外だったのが、YMYL(Your Money or Your Life:健康や財産など人生に影響する情報)に分類されるクエリです。「AIがリスクの高い医療情報に答えるのは慎重になるはず」という予想に反して、YMYL全体の出現率は34.3%と、通常のクエリ(17.2%)の約2倍でした。中でも医療系のクエリに限ると44.1%まで跳ね上がります。Googleが医療情報の要約に対して及び腰になっているどころか、むしろ積極的に答えを出しているように見えるのは、率直に言って驚きました。
逆に、ニュース性の高いクエリ(6.3%)やローカル検索(7.9%)は、明確に出現率が低く抑えられています。時事性が高い情報や、地域に依存する情報については、AIが要約するにはリスクが高いと判断されているのかもしれません。
潮流としては、対象範囲が広がりつつある
Semrushが2025年を通して1,000万件以上のキーワードを追跡した調査によると、AI Overviewsが出現するクエリのうち「情報収集型」が占める割合は、1月の91.3%から10月には57.1%まで下がっています。これは、これまで出現しにくかった商業・トランザクション型のクエリにも、少しずつAI Overviewsが広がってきていることを意味します。今回見てきた「ナビゲーショナルはほぼ出ない」「トランザクションは2.1%」という低さは、あくまで2025年9月時点のスナップショットです。この線引きは、今後動いていく可能性が高いと見ています。
私の見立て:Googleが避けているのは「危険なテーマ」ではなく「不安定な答え」
ここまでのデータを並べて、私は一つの仮説にたどり着きました。理由型・真偽型・定義型が高く、比較型が低い。医療系YMYLは高いのに、ニュースやローカル検索は低い。この一見バラバラに見える現象は、「テーマの危険度」ではなく「答えが1つに定まって動かないかどうか」という、たった1つの基準で説明できるのではないかということです。
医療系の「なぜ〇〇になるのか」「〇〇とは何か」は、見た目は危険なテーマですが、実際には医学的にほぼ確立した、動かない答えがあります。だから出やすい。一方で比較型(〇〇 vs △△)は、テーマ自体は無害でも、使う人の条件によって最適解が変わり、優劣を断定しにくい。だから出にくい。ニュースやローカル検索も同じで、答えが刻一刻と変わる、あるいは個別事情に依存するため、要約した瞬間に古くなったり外れたりするリスクを抱えています。
この見立てを補強する記事も見つけました。Serpstatが2025年5月に約10億件のクエリを対象に行ったボラティリティ(変動性)調査では、AI Overviewsは複雑な意思決定における不確実性を減らすために設計されており、発見・比較・リアルタイム性の高いコンテンツを代替するためのものではないと分析されています。この調査でも、健康分野が最もAI Overviewsの出現率が高く(約54%)、ショッピングやスポーツ、リアルタイム性の高い検索は出現率が低いという、Ahrefsのデータと方向性が一致する結果が出ています。調査手法もデータセットも別物なので数字はそのまま比較できませんが、「答えが動かない領域で出やすい」という傾向自体は、複数の独立した調査で繰り返し観測されているということです。
なぜGoogleがこの線引きをするのかについては、AI Overviewsの技術的な仕組みからも説明がつきます。MIT Technology Reviewの解説によると、AI OverviewsはRAG(検索拡張生成)という仕組みを使い、検索結果から関連する情報を取得した上で回答を生成していると見られています。この方式は、取得と生成の両方が正確に噛み合って初めて機能するとされています。答えがすでに確立していて情報源同士が矛盾しない領域では取得の精度が上がりやすく、逆に答えが状況によって割れる領域や、情報が刻一刻と更新される領域では、取得した情報同士が食い違い、要約の精度が落ちるリスクが高くなります。Googleが「答えの安定性」で線引きしているように見えるのは、この技術的な制約とも整合的だと思います。
この仮説が正しいとすれば、GEO担当者が見るべきなのは「自社の業界が危険かどうか」ではなく、「自社が答えている問いに、揺るがない1つの答えがあるかどうか」です。同じ業界の中でも、確立した事実を扱うコンテンツと、条件によって答えが変わる比較コンテンツとでは、AI Overviewsでの扱われ方がまったく違う可能性があります。
まとめ
AI Overviewsの出現率を左右しているのは、キーワードの見た目ではなく、Googleがそのクエリをどう分類しているかです。理由・真偽・定義を問う検索は出やすく、比較や特定サイトへの誘導を目的とした検索は出にくい。ブランド名を含んでいても、意図が「行き先を知りたい」のか「意味を知りたい」のかで結果はまったく変わります。そして、医療のようにリスクが高いはずの領域でむしろ出現率が高く、ニュースやローカル検索では抑えられているという事実は、Googleの線引きが単純な「安全か危険か」では説明できないことを示しています。この分類の仕組みを理解しておくことが、クエリ単位でAI Overviews対策を考える出発点になると思います。
参考文献・調査ソース
- Ahrefs:What Triggers AI Overviews? 86 Factors and 146 Million SERPs Analyzed(2025年11月・2026年5月更新)
- Pew Research Center:Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results(2025年7月)
- Semrush:Semrush AI Overviews Study(2025年、1,000万件以上のキーワード分析)
- Serpstat:Google AI Overviews Changed Search Faster Than Anyone Expected(2025年5月・約10億クエリのボラティリティ調査)
- MIT Technology Review:Why Google's AI Overviews gets things wrong