EN ログイン

AI利用率が高いのにGEO優先度が低い業界とは? |「AIに使われる」と「AIに選ばれる」は別問題

コラム 2026-06-12
AI利用率が高いのにGEO優先度が低い業界とは? |「AIに使われる」と「AIに選ばれる」は別問題
著者:喜多 陽平 / Kita Yohei

AI利用率が高い業界ほど、GEO優先度も高いはず——そう思っている人がほとんどだと思います。でも実際はそうではありません。Genviewが業界別のGEO優先度を評価していく中で、私が最も「伝えにくい」と感じたのがこの点でした。

AI利用率が高い業界ほどGEO優先度が高いとは限らない

ヘルスケア情報・金融サービス・法律情報は、AIが最も活発に使われている領域のひとつです。毎日4,000万件の健康質問がAIに投げられており(ヘルスケア向けGEO参照)、AIに金融相談する米国人は1年で10%から55%に増加しています(金融向けGEO参照)。

それにもかかわらず、Genviewの業界別GEO優先度マップではこれらを優先度B(計画的に対応)と評価しています。

「なぜ?」と思うのは当然の反応です。この記事では、その理由を整理します。

AI利用率とGEO優先度は何が違うのか

AI利用率は「情報収集の活発さ」を表す指標

AI利用率が高いということは、その業界に関する質問がAIに多く投げられているということです。「この症状は何?」「住宅ローンの金利はどう比較する?」「契約書のこの条項は何を意味する?」——これらは全部、情報収集のためのクエリです。

AIが情報を提供する。ユーザーはその情報を受け取る。それで一旦終わります。

GEO優先度は「AIに出ないと損する度合い」

私が業界別の優先度を評価する際に見ているのは、AI利用率ではありません。「AIの回答に登場しないことが、競争上どれだけ致命的か」です。

AI利用率が高くても、AIへの不在が即・機会損失に直結しない業界があります。逆に、AI利用率がそれほど高くなくても、AIが候補を絞る役割を担い始めている業界では、登場できないことが直接的なビジネス損失につながります。この差が、AI利用率とGEO優先度が一致しない理由です。

なぜ金融・法律・医療は優先度Bなのか

AI利用率 ≠ GEO優先度:決め手は「AIが候補選定者になっているか」
※ Genview編集部による整理
AI利用率とGEO優先度の関係:決め手は候補選定者かどうか AI利用率が高い AIは「情報源」か? 「候補選定者」か? 情報収集型 金融・法律・医療 人的介在が残る GEO優先度 B 候補選定型 SaaS・EC・BtoB AIが候補を出して完結 GEO優先度 S

金融:AIは相談相手だが、契約相手ではない

住宅ローンの比較をAIで調べる。保険商品の違いをAIに聞く。資産運用の基礎知識をAIで学ぶ。これらはすべて「情報収集」です。

しかし最終的な契約・申し込みは、FP・銀行・証券会社という人的な介在を経ます。AIが「おすすめはAファンドです」と言っても、ユーザーはすぐにそこで申し込むわけではありません。資格・規制・信頼性の担保が、人的な確認を必要とします。

AIは比較表を出せても、契約や申込の最終判断は行えない。このギャップが存在する限り、AIの回答に登場しないことの直接的な機会損失は、SaaSやECほど大きくならないと私は見ています。

法律:AIは情報提供者だが、代理人ではない

「解雇通知を受け取った。これは不当解雇?」「賃貸の原状回復、どこまでが自分の責任?」——これらはAIが得意とする質問です。AIは判例・法律の解説・大まかな方向性を提示できます。

しかし依頼するのは弁護士です。AIは法廷に立てない。法的な効力を持つ書類を作れない。相手方と交渉できない。AIによる情報収集と、弁護士への依頼の間には、明確な断絶があります。

医療:AIは症状を説明するが、診断はしない

「頭痛と発熱が続いている。何が考えられる?」——こういった質問にAIは答えます。しかしAIはその次のステップ(どの病院に行くか・どの医師に診てもらうか)まで決定する役割を、まだ担っていません。

症状の説明から病院選び、そして実際の受診まで、人的な判断と行動が必要です。AIが情報を提供したあとに、別の意思決定プロセスが始まる。この「距離」があるうちは、GEOの緊急度はSやAには達しないと私は見ています。

一方でSaaSやECが優先度Sになる理由

SaaSはAIが候補選定者になり始めている

「中小企業向けの営業管理ツールを探しているんだけど、何がおすすめ?」——この質問にAIが答えた瞬間、ユーザーは「候補リスト」を受け取ります。Forresterの2026年調査では、B2Bバイヤーの94%がLLMを購買プロセスで活用しており、意思決定の70%が初回ベンダーコンタクト前に完了しているとされています。

AIが出した候補に入れなければ、その商談は始まらない。金融や法律のような「情報収集→人的介在→決定」という構造がなく、「AIが候補を絞る→ユーザーが選ぶ」という直結した流れになっています。これがSの理由です。

ECはAIが商品比較そのものを代替する

「砂糖不使用で子供向けのおやつでおすすめは?」——AIはブランド名を3〜5件挙げます。AdobeのデータではAI経由の訪問者は通常より42%高いコンバージョン率を示しており、すでに購買の文脈にAIが入り込んでいます。

比較サイトを見る・店頭で手に取る・口コミを読む——そういったプロセスの一部をAIが代替し始めています。AIに登場できなければ、そもそも比較の土台に乗れない。

Genviewが重視しているのはAI不在リスク

GEOの優先度を判断するうえで、私が見ているのは「AI利用率」ではなく、「AIに登場しないことで何を失うか」です。この概念をAI不在リスクと呼んでいます。AI利用率が高くても、人的介在が残る業界では不在のコストは相対的に低い。逆にAIが候補選定まで担う業界では、不在は即・機会損失につながります。

今後、優先度が上がる可能性はあるか

法律・金融・医療もAやSになる可能性はある

AIエージェント・AI予約・AI比較の普及が進んだとき、状況は変わります。AIが「あなたの症状には〇〇クリニックが適しています。予約しますか?」まで実行できるようになれば、医療もAI不在リスクは一気に高まります。法律相談AIが法的書類の初稿を自動生成し、弁護士はレビューだけする形になれば、弁護士の可視性がAI上の露出に直結し始めます。この変化は、業界によって1年後に来るかもしれないし、5年後かもしれない。現時点では「まだその構造になっていない」というのが私の見立てです。

優先度は固定ではなく変化する

Genviewの業界別GEO優先度マップは「2026年版」です。AIの普及速度と業界構造の変化に合わせて、優先度は変わっていきます。現在Cの業界が半年後にBになる可能性も、現在BだったものがAになる可能性も、十分にあります。優先度マップは現時点のスナップショットであり、ロードマップではないということです。

まとめ

  • AI利用率とGEO優先度は別の概念
  • 「AIに使われる(情報収集)」と「AIに選ばれる(候補選定)」は別問題
  • 金融・法律・医療はAI利用率は高いが、人的介在が残るためAI不在リスクは相対的に低い
  • SaaS・EC・BtoBはAIが候補選定に直結しているため、不在の機会損失が大きい
  • GEOはAI利用率ではなくAI不在リスクで考える
  • 優先度は固定ではなく、AI普及に伴い変化していく

AI利用率ランキングを見るだけでは、GEOの優先順位は判断できません。重要なのは、AIが情報源なのか、候補選定者なのかです。

22業界の現在の優先度評価は、業界別GEO優先度マップ(2026年版)をご覧ください。

関連記事:引用・推薦・選定の違いについてはAIに引用されても売上は増えないをご覧ください。

← 実験・コラムに戻る
お申込みはこちら →