自治体にもGEO対策は必要?企業とは異なる役割を解説
著者:喜多 陽平 / Kita Yohei
公開日:
GEOという言葉は、企業のマーケティング施策として語られることが多くあります。
生成AIやAI検索の回答の中で自社が引用・言及されること。比較候補として挙げられること。そして、商品やサービスを選んでもらうこと。
企業にとっては、それが売上や商談機会につながるため、分かりやすい目的です。
では、自治体にもGEO対策は必要なのでしょうか。
結論から言えば、自治体にもGEOを考える意味があります。ただし、企業と自治体でGEOそのものが別物になるわけではなく、重視する目的の比重が異なります。
GEOは企業向けのマーケティング施策だけを指すものではありません。自治体が公開する公式情報についても、AI検索上でどのように理解・提示・参照されているかを確認する際に関係します。
自治体では、AIに「選ばれる」ことだけではなく、住民が必要としている正確な公式情報が、AIを介した回答の中で適切に理解・提示・参照される状態を整えることの重要性が大きくなります。
一方で、観光、移住、地域振興などでは自治体同士が比較され、AIから候補として紹介・推薦される場面もあります。
そのため、「企業のGEO=選ばれるため」「自治体のGEO=正確な情報を届けるため」と完全に二分するのではなく、どの目的をより重視するかが異なると捉える方が適切です。
GEOの基本的な考え方については、GEOとは?でも解説しています。
この記事で考えること
- 自治体にもGEO対策が必要なのか
- 企業と自治体でGEOの目的はどう違うのか
- 「機会損失」と「情報アクセス上の不利益」の違い
- 自治体でも「選ばれるGEO」が必要になる領域
- GEOをマーケティングだけで説明できない理由
自治体にもGEO対策は必要なのか
住民が行政情報を調べる方法は、検索エンジンだけとは限らなくなっています。
たとえば、次のような質問をChatGPTやGeminiなどの生成AIに直接入力することも考えられます。
- 「〇〇市で児童手当を申請するには?」
- 「〇〇市の粗大ごみはどうやって捨てる?」
- 「災害時の避難所はどこ?」
- 「〇〇市にはどんな子育て支援がある?」
このとき重要になるのは、自治体サイトが検索結果の何位に表示されているかだけではありません。
AIがどの情報を参照し、どのような内容として住民へ提示するかも、情報提供を考えるうえで無視できない要素になります。
自治体公式サイトに最新かつ明確な情報が掲載されていても、それがAIを介した回答の中で常に正確に扱われるとは限りません。
また、第三者サイトや過去の情報などが回答に含まれる可能性もあります。
自治体におけるGEOは、「AIにおすすめされるため」だけではなく、公式情報がAI検索上でどのように理解・提示・参照されているかを確認し、必要に応じて情報を整えるという観点から考える必要があります。
Adobeが示した政府機関におけるGEOの仮想ケース
Adobeは政府機関向けのGEOを解説する記事の中で、SNAPの給付カードを紛失した利用者を想定した仮想ケースを紹介しています。
ここで重要なのは、これは実際に起きた被害事例ではなく、行政情報が生成AIから適切に取得・理解されなかった場合に何が起こり得るかを説明するための仮想ケースだという点です。
たとえば、利用者が生成AIにカード紛失時の手続きを尋ねたとします。
その際、公式情報が十分に参照されなければ、次のような問題が起こる可能性があります。
- 手続き方法が正しく案内されない
- 州や制度の違いが混同される
- 利用できる支援情報が回答から抜ける
- 第三者サービスの情報が優先される
企業の商品情報であれば、AI回答に出てこないことは「機会損失」と表現できます。
しかし行政サービスの場合、情報が十分に提示されないことで、必要な制度や手続きへたどり着きにくくなる可能性があります。
ここでは、GEOによって必ず正しい回答を生成できるという意味ではありません。
重要なのは、自治体が公式情報の発信主体として、AI検索から利用される可能性も含めて情報の正確性・明確性・一貫性を整えることです。
企業と自治体でGEOの目的はどう違うのか
企業と自治体で、GEOの基本的な考え方が完全に変わるわけではありません。
どちらも、生成AIやAI検索上で、自らに関する情報がどのように理解・提示・参照・言及されているかを確認することが重要です。
違うのは、何を成果として重視するかの比重です。
企業では、たとえば次のような状態が重要になります。
- 比較候補に入る
- おすすめとして紹介される
- 商品やサービスの特徴が正しく説明される
- 自社サイトや第三者情報が回答の根拠として参照される
- 検討や購入につながる
一方、自治体では、次のような状態の重要度が高くなります。
- 行政手続きが正しく説明される
- 対象者や条件が誤解されない
- 防災や福祉などの重要情報が適切に提示される
- 古い制度情報と現在の情報が混同されにくい
- 公式情報が確認可能な形で整理されている
つまり、企業では「比較・推薦で選ばれること」の比重が高くなりやすく、自治体では「公式情報が適切に理解・提示・参照されること」の比重が高くなりやすい、という違いです。
ただし、この違いを固定的な二分として考える必要はありません。
自治体でも「選ばれる」ことが重要になる
自治体にも、比較や推薦が重要になる領域があります。
たとえば、
- 「子育てしやすい自治体は?」
- 「東京から移住するならどこがおすすめ?」
- 「週末旅行におすすめの地域は?」
- 「起業支援が充実している自治体は?」
- 「ワーケーションに向いている地域は?」
といった質問です。
このような場合、AIは複数の自治体や地域を比較して候補を提示する可能性があります。
そのため、観光、移住、地域振興、企業誘致などの領域では、自治体にも比較・推薦の候補として適切に理解されることが重要になります。
つまり、
企業は選ばれるためのGEO、自治体は正しい情報を届けるためのGEO
と単純に分けることはできません。
より正確には、
自治体では、行政情報については正確な理解・提示・参照の比重が大きく、観光や移住などでは比較・推薦で選ばれる比重も大きくなる
と考えることができます。
自治体のGEOで確認したいこと
自治体でGEOを考える場合も、特別な「自治体GEO」という別の技術があるわけではありません。
まず確認したいのは、住民や利用者が実際に尋ねそうな質問に対して、AIが自治体の情報をどのように扱っているかです。
たとえば、
- 制度名や手続き内容が正しく説明されているか
- 対象者や申請条件が正しいか
- 古い情報が混在していないか
- 公式サイトが情報源として参照されているか
- 他の自治体や第三者情報と混同されていないか
- 観光・移住などでは地域の特徴が正しく説明されているか
といった点です。
なお、AI回答で情報源がどのように示されるかについては、AI引用とは?で詳しく解説しています。
具体的なGEO対策の進め方については、GEO対策の始め方を参照してください。
GEOをマーケティングだけで説明できない理由
GEOは企業のマーケティング文脈から広がってきた言葉ですが、生成AIやAI検索が情報取得の入口として使われるのであれば、その影響範囲は商品・サービスの比較だけではありません。
行政手続き、医療、教育、防災など、利用者が正確な情報を必要とする領域でも、AIがどの情報を参照し、どのように回答するかは重要になります。
このときGEOは、「AIに自社をおすすめさせるテクニック」だけでは説明できません。
企業でも自治体でも共通して重要なのは、
AIからどう理解されているか、どの情報が参照されているか、回答に誤認識や情報の不一致がないかを確認し、必要な情報を整えること
です。
ただし、情報を整えたからといって、AIが必ずその情報を引用したり、正確な回答を生成したりすることを保証できるわけではありません。
GEOは、AI回答を直接コントロールする施策ではなく、AI検索を含む情報環境の中で、自らの公式情報が適切に理解・利用されやすい状態を整えていく取り組みとして考える必要があります。
まとめ
自治体にもGEO対策を考える意味があります。
ただし、その目的を企業向けGEOと完全に同じものとして考える必要はありません。
企業では、比較・推薦の中で候補に入り、「選ばれること」が成果につながりやすくなります。
一方、自治体では、行政手続き、福祉、防災、生活情報などについて、正確な公式情報がAI検索上で適切に理解・提示・参照されることの重要度が高くなります。
同時に、観光、移住、地域振興などでは、自治体にも比較・推薦され「選ばれる」役割があります。
つまり、企業と自治体でGEOそのものが別物なのではなく、GEOで重視する目的の比重が異なると考えるのが適切です。
そして、GEOによってAI回答の正確性や引用を保証できるわけではありません。
自治体にとって重要なのは、AI検索を新たな情報接点の一つとして捉え、公式情報がどのように理解・提示・参照されているかを確認しながら、正確で一貫した情報を整えていくことです。