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AIに選ばれる会社と、人間に選ばれる会社は同じなのか?

コラム 2026-06-15
AIに選ばれる会社と、人間に選ばれる会社は同じなのか?
著者:喜多 陽平 / Kita Yohei

ChatGPTに「おすすめの転職エージェントを教えて」と聞くと、数社のサービスが紹介されます。では、その会社は本当に市場で選ばれているのでしょうか。

私は必ずしもそうではないと思っています。実際には、売れているのにAIに選ばれない会社もあれば、AIに選ばれているのに売れない会社も存在します。

AIに選ばれる会社と、人間に選ばれる会社は似ている部分もありますが、評価基準が完全に同じではありません。この記事では、その違いについて考えてみます。

AIと人間は何を見ているのか

AIと人間では、ブランドを評価するときに見ているものが違います。

AIが見ているもの 人間が見ているもの
公開情報量 実体験
外部からの言及 口コミ
情報の一貫性 信頼感
FAQ・事例・記事 サポート対応
説明のしやすさ 価格・条件

AIは実際にサービスを使ったことがありません。だから評価できるのは「公開されている情報」だけです。一方、人間は営業担当の対応・価格・導入後のサポートまで含めて評価します。

AIがブランドを評価する仕組みを少し掘り下げると、大量のWebテキストを学習する過程で、ブランド名と特定のカテゴリや文脈を結びつけて概念を形成しています。AIの世界ではこれをEntity(エンティティ)と呼びます。Entityとして認識されているブランドはAIが回答を生成するときに候補として浮上しやすく、認識されていないブランドは候補に上がりません。この認識の有無が、AIに選ばれるかどうかの出発点になります。

人間の評価プロセスとはここが根本的に違います。人間は営業トークを聞き、デモを体験し、価格を交渉し、導入後のサポートを経験して判断します。AIにはそのプロセスがありません。この非対称性が、AIに選ばれる会社と人間に選ばれる会社のズレを生んでいます。

売れているのに、AIに選ばれない会社

業界では知られた存在。顧客満足度も高い。しかしAIに推薦されない——そういう会社が存在します。

Webサイトはある。実績もある。しかし中身を見ると、ブランドイメージ中心で情報が薄かったり、導入事例が「某大手企業様」という記載にとどまっていたり、競合との比較コンテンツや詳細なFAQがなかったりする。FAQは営業担当が口頭で答えてきたもので、サイトには載っていない。評判は業界内の口コミで回っているが、Webに文字として残っていない。

「情報がない」のではなく「AIが引用できる形で公開されていない」のです。AIが引用できるのは、構造化されたテキストとして公開されている情報だけです。どれだけ優れたサービスでも、AIが読み取れる形で情報が存在しなければ、推薦の候補に入りません。

海外のGEO調査会社Xyleは「AIは最良のプロダクトを持つ会社を推薦しない。最良のコンテンツを持つ会社を推薦する」と述べています。私は完全には同意していません。しかし少なくとも、AIが公開情報を評価しているという点では本質を突いていると思います。

2000年代に「Webサイトを持たない会社は見つけてもらえない」と言われました。私は今、同じことがAIで起き始めていると感じています。

ただし今回は、Webサイトを持つだけでは足りません。AIが理解できる形で情報を整備していなければ、存在していても見つけてもらえない時代になりつつあります。

AIに選ばれているのに、売れない会社

逆のケースもあります。AIにはよく推薦される。しかし実際の売上や顧客満足度はそれほど高くない——という会社です。

AIはFAQがある・導入事例がある・比較記事がある・用語集があるなど「理解しやすい会社」を好む傾向があります。実際の商品力が高くなくても、情報発信が整っている会社はAIに推薦されやすくなります。

また、AIの推薦がどの程度信頼できるかという点も考える必要があります。SparkToroの調査によると、同じクエリを100回投げても全く同じ推薦リストが返ってくる確率は1%未満です。AIの推薦は「正解」ではなく「確率」であり、SOM(Share of Model)という指標で追うことが適切です。ある会社が100回の質問のうち40回登場するとしても、それは「40%の確率で候補になる」という意味であり、「その会社が良い」という評価とは別の話です。

さらに言えば、AIに推薦されることと、それが実際の購買につながることの間には、人間の判断が挟まります。AIが推薦したとしても、その後の営業対応・価格交渉・デモの品質で最終的な選択は決まります。AIの推薦はあくまでも「検討リストに入る」段階に過ぎません。

ただ私は、このケースはGEOの問題というより、マーケティング全体の問題だと考えています。AIに選ばれやすい状態を作ることと、人間に選ばれる価値を持つことは、本来矛盾しません。

GEOの本質は、評価を変えることではない

ここで整理しておきたいことがあります。

GEOの目的は、AIを騙して推薦させることではありません。本来持っている価値を、AIが正しく理解できる状態を作ることです。具体的には、導入事例・比較コンテンツ・FAQの整備、E-E-A-Tに基づく信頼性の強化、そして自社ブランドを正しいEntityとしてAIに認識させること——これらはすべて「すでに持っている価値をAIに伝える作業」です。

「良い会社なのに選ばれない」を減らすこと。これがGEOの役割だと私は考えています。

AIに選ばれる会社と人間に選ばれる会社が完全に一致することはないかもしれません。しかし「AIにも人間にも選ばれる会社」を目指すことは可能です。そのためには、コンテンツで価値を伝える力と、実際に提供できる価値の両方が必要です。どちらかだけでは不十分です。

逆に言えば、コンテンツだけを磨いてAIに推薦されるようになっても、実際のサービス品質が伴わなければ、それは長続きしません。AIに選ばれることはゴールではなく、入口です。

実際に私たちも検証しました

実際に私たちは、PRだけで引用される状態と内部コンテンツを増やさない状態を意図的に作り、AIの反応を観察しました。その結果はこちらの記事で公開しています。

【実験】AIに推薦されたGenviewは、なぜ推薦されなくなったのか?

まとめ

  • AIと人間はブランドの評価基準が異なる。AIは公開情報を、人間は実体験を評価する
  • 売れているのにAIに選ばれない会社は、情報が「AIに引用できる形で公開されていない」状態にある
  • AIに選ばれているのに売れない会社は存在するが、それはGEOではなくマーケティング全体の問題
  • AIの推薦は確率であり、推薦されることと実際に選ばれることは別の話
  • GEOの目的はAIを騙すことではなく、本来の価値をAIに正しく伝えること
  • 「良い会社なのに選ばれない」を減らすことがGEOの役割

関連コラム:GEO対策の本質については私が考えるGEOの本質をご覧ください。

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