GEO対策を始める前に「理想のAI回答」を決めるべき理由
著者:吉田 清登(株式会社FID CMO / Genview PM)
公開日:
GEO対策について調べると、構造化データ、FAQ、llms.txt、コンテンツ改善、外部メディア対策など、さまざまな施策が出てきます。
もちろん、どれも必要になる可能性があります。
ただし、最初に決めるべきなのは施策ではありません。
「AIの回答の中で、自社をどのように説明してほしいのか」という理想の状態です。
なぜなら、理想が決まっていなければ、ChatGPTやGeminiの回答を見ても、何が良くて何が悪いのか判断できないからです。
構造化データを追加すべきなのか、コンテンツを直すべきなのか、外部情報を整えるべきなのかも決められません。
GEO対策は、「何を実装するか」から始めるのではなく、「どんなAI回答を目指すのか」を決めるところから考えます。
この記事では、その理由と実際の進め方を整理します。
GEO対策は「How」から始めない
新しい施策が登場すると、どうしても「何をすればいいのか」に目が向きます。
GEOでも同じです。
- 構造化データを入れた方がいい
- FAQを増やした方がいい
- llms.txtを設置した方がいい
- AIクローラーを許可した方がいい
- 一次情報を増やした方がいい
- 外部メディアで言及を増やした方がいい
こうした施策は分かりやすいため、ついここから始めたくなります。
しかし、先に施策だけを選んでしまうと、
その施策によって、何を改善したいのか
が曖昧になります。
たとえばFAQを追加したとしても、現在のAI回答で何が足りていないのかが分からなければ、そのFAQが本当に必要なのか判断できません。
外部メディアで言及を増やしても、どの文脈で自社を説明してほしいのかが決まっていなければ、企業名が出るだけで終わる可能性があります。
AI検索やGEOについて発信する複数の企業でも、具体的な施策を始める前に、「AIにどう説明されたいか」「自社が何者で、何を提供しているのか」「どの質問や文脈で候補になりたいのか」を整理する重要性が指摘されています。
言葉は異なりますが、共通しているのは、
施策の前に、まず目指す状態を決める
という順番です。
本記事でいう「認識」とは何か
ここで、「AIに認識される」という言葉を整理しておきます。
この言葉だけを見ると、AIの内部に、
この会社は○○の会社だ
という固定されたプロフィールが存在し、それを直接確認できるように聞こえるかもしれません。
しかし、企業側からAI内部の状態を直接見ることはできません。
同じ質問でも、AIプラットフォーム、質問の仕方、タイミング、取得された情報などによって回答は変わります。
そのため、この記事では「認識」を、
実際のAI回答の中で、企業・ブランド・サービスがどのように説明されているか
という観測可能な状態として扱います。
たとえば、あるサービスについて、
「メール配信ツールです」と説明されるのか、「EC事業者向けのCRM・マーケティング支援ツールです」と説明されるのかでは、ユーザーが受け取る印象は大きく違います。
重要なのは、「AIの内部で何が起きているか」を推測することではありません。
実際にユーザーへ提示されている回答が、自社の意図する説明と合っているかを確認することです。
AIが企業やブランドをどのように扱うかについては、AIは企業・ブランドをどう認識するのかで詳しく解説しています。
まず「理想のAI回答」を決める
GEO対策を始める前に、まず決めるべきなのが理想のAI回答です。
ここでいう理想とは、単に、
- AIに出たい
- おすすめされたい
- 有名な会社だと思われたい
ということではありません。
少なくとも、
- 何の会社・サービスとして説明されたいのか
- 誰に向けたサービスなのか
- どんな課題を解決するのか
- どんな強みで説明されたいのか
- どんな質問や検討場面で候補になりたいのか
といった方向性を整理しておく必要があります。
ただし、このページでは理想の認識の作り方そのものには深く入りません。
具体的な設計方法については、AIは企業・ブランドをどう認識するのかで詳しく整理しています。
ここで重要なのは、
理想が決まっていなければ、現在のAI回答が良いのか悪いのかを判断できない
ということです。
理想がなければ、AI回答の「ズレ」は判断できない
たとえば、AIに自社サービスについて質問したところ、
「中小企業向けのマーケティングツールです」
という回答が返ってきたとします。
これだけを見ても、その回答が良いのか悪いのかは分かりません。
もし自社が、
中小企業向けの幅広いマーケティングツール
として説明されたいのであれば、大きな問題ではないかもしれません。
一方で、
EC事業者向けで、LINE・メール・顧客データを一元管理できるCRM
として説明されたいのであれば、
- EC向け
- CRM
- LINEとの連携
- 顧客データの一元管理
といった重要な特徴が回答から抜けています。
このとき初めて、
理想と現実にGAPがある
と判断できます。
つまりGEO対策では、単にAI回答を見るだけでは不十分です。
理想のAI回答と比較して初めて、改善すべき箇所が見えてきます。
次に、実際のAI回答を確認する
理想のAI回答を決めたら、次に実際の回答を確認します。
たとえば、
- 自社名
- サービス名
- 自社が属するカテゴリー
- 比較・推薦に関する質問
- ユーザーが抱える具体的な課題
などをChatGPTやGeminiで確認します。
ここで重要なのは、
「AIに自社について聞けば、AI内部の本当の認識が分かる」
と考えないことです。
確認できるのは、あくまでその質問に対して、その時点で提示されたAI回答です。
そのため、一度だけ質問して判断するのではなく、重要なクエリを決めて継続的に観測する方が実務では有効です。
Genviewでも、登録したクエリに対してChatGPTやGeminiなどの回答を継続的に計測し、
- 正しく言及されているか
- 自社サイトが参照されているか
- 対象URLが参照されているか
- 誤った説明が含まれていないか
- そもそも言及されていないか
を確認します。
GEOの現状把握は、AIに「あなたは私をどう思っていますか」と聞くことではありません。
ユーザーが実際に使う質問に対して、自社がどう説明されているのかを見ることです。
理想と現実のGAPが、改善点を見つける起点になる
ここまで来ると、GEOで何を改善すべきかが見えてきます。
理想のAI回答
「製造業の複雑なシフト管理に対応できる勤怠管理サービス」
実際のAI回答
「一般的なクラウド型勤怠管理サービス」
この場合、
- 製造業向け
- 複雑なシフトへの対応
という重要な特徴が十分に伝わっていません。
逆に、理想が「EC向けCRM」で、実際のAI回答が「EC向けCRMで、LINEとメールを一元管理できるサービス」であれば、理想にかなり近い状態です。
このように、
理想 → 実際のAI回答 → GAP
という順番で見れば、GEO対策の課題を具体化できます。
Genviewでは、この「理想と現実の差」を改善の起点として考えています。
GAPが分かってから施策を選ぶ
GAPが見つかったら、次に、
なぜそのズレが起きているのか
を調べます。
たとえば「製造業向け」という特徴がAI回答に出てこないのであれば、
- 公式サイトに明確に書かれているか
- サービスページで十分に説明されているか
- 導入事例に製造業の実績があるか
- 比較サイトや第三者メディアでどう説明されているか
- AIがどのURLを参照しているか
などを確認します。
そこで初めて、
- サービスページを改善する
- 導入事例を追加する
- FAQを追加する
- 内部リンクを整理する
- 構造化データを実装する
- 外部メディア上の情報を修正する
- 独自データや一次情報を追加する
といった施策の優先順位を決められます。
構造化データやFAQは重要です。
しかし、それ自体がGEOの目的ではありません。
理想と現実のGAPを埋めるために必要なら実施する。
この順番で考えることが重要です。
「理想のAI回答」には根拠も必要になる
もう一つ、理想のAI回答を考えるときに忘れてはいけないことがあります。
それは、
そう説明されるだけの根拠が、本当にあるのか
ということです。
たとえば、
- 「サポートが手厚い」
- 「高品質」
- 「導入しやすい」
- 「業界に強い」
といった表現だけでは、かなり抽象的です。
AI回答で企業やサービスを比較・説明する際には、
- 対応範囲
- 料金
- 機能
- 導入社数
- 導入事例
- 調査結果
- 性能値
- 利用条件
など、具体的に確認できる情報が説明材料になります。
ここで重要なのは、「数字を出せばAIに選ばれる」ということではありません。
自社が主張している強みを、確認可能な具体的情報で説明できる状態にすることが重要です。
理想のAI回答は、広告コピーを作ることではありません。
実態に基づいて、「どのように説明されたいか」を整理することです。
自社サイトだけを見ても原因は分からない
GAPの原因を調べる際、自社サイトだけを確認して終わるのも不十分です。
AI検索では、公式サイト以外の情報が参照されることがあります。
たとえば、
- 比較サイト
- 専門メディア
- ニュース記事
- レビュー
- SNS
- UGC
などです。
そのため、自社サイトでは「A」と説明しているのに、外部では「B」と説明されている場合、実際のAI回答でも説明が安定しない可能性があります。
ただし、情報をすべて同じ文章に統一すればAIに推薦される、という話ではありません。
自社・外部・UGCは、それぞれ役割が異なります。
重要なのは、企業・ブランド・サービスについての基本的な事実に、大きな矛盾がないかを見ることです。
この考え方については、GEO対策で重要な3つの情報層とは?自社・外部・UGCの考え方で詳しく解説しています。
GEO対策を進める基本的な順番
1. 理想のAI回答を決める
AI回答の中で、自社がどのような企業・ブランド・サービスとして説明されたいのかを整理します。
2. 実際のAI回答を監視する
重要なクエリを使い、ChatGPTやGeminiなどで現在どのように説明されているかを継続的に確認します。
3. 理想と現実のGAPを整理する
何が足りないのか、何が間違っているのか、どの文脈で候補になれていないのかを確認します。
4. GAPの原因を調べる
自社サイト、外部メディア、UGC、AIが参照しているURLなどを確認します。
5. 必要な施策を選ぶ
コンテンツ改善、FAQ、構造化データ、一次情報、外部情報整備などから、GAPに応じた施策を選択します。
つまり、
理想 → 監視 → GAP → 原因 → 改善
という流れです。
施策を先に決めるのではなく、理想と現在のAI回答の差を確認してから、必要な改善を選びます。
よくある質問
まとめ
GEO対策には、さまざまな施策があります。
構造化データ、FAQ、一次情報、コンテンツ改善、外部メディア、UGC。
どれも重要になる可能性があります。
ただし、最初に決めるべきなのは施策ではありません。
AIに自社をどのように説明してほしいのかという「理想のAI回答」です。
その理想を決めたうえで、実際のAI回答を監視する。
そして、
理想と現実はどこが違うのか
を整理します。
そのGAPの原因を調べてから、必要な施策を選びます。
GEO対策で重要なのは、先に「構造化データを入れよう」「FAQを作ろう」「外部メディアを増やそう」と施策を決めることではありません。
「AIの回答の中で、自社はどのような存在として説明されたいのか」を決め、その理想と実際のAI回答との差を継続的に確認することです。
GAPが見えたとき、初めて「何を改善すべきか」が具体的になります。
GEO対策の始め方全体については、GEO対策の始め方|初心者が最初にやるべきこともあわせてご覧ください。
参考サイト
外部参考ページ
- AI検索時代の自社サイト対策|AIに選ばれるブランドをつくる3つのステップ
- AIに誤学習されると何が起きるのか
- AI検索時代、勝つのは「一次情報」ではない。「ファクト」を作る企業が推奨される理由
- AIとの付き合い方がわかる3つのコツ|質問する前に知っておくこと