「AIの引用元は毎回変わる」は、どこまで本当なのか
著者:吉田 清登(株式会社FID CMO / Genview PM) 公開:2026-09-25
AIが引用するサイトは、毎回まるごと入れ替わっているわけではありませんでした。
海外の3調査を読み、その見立てを、日本語のChatGPTとGeminiで5業界を6回観測したデータで確かめました(2026年9月)。
Genview の商談で、こう言われることがあります。「AIの回答は聞くたびに変わるので、引用元を追いかけても仕方がないのでは」。
言いたいことは分かります。同じ質問を、同じAIに、続けて2回投げる。返ってくる引用元が違う。日をまたいだからではありません。数分しか空けていなくても違います。誰でもその場で再現できるので、話はたいていそこで終わります。
私も長いあいだ、そこで止めていました。効果測定の話をするときに「ただ、AIの回答はブレるので」と但し書きを付けて、その先を測っていませんでした。
それでも、「変わる」と「全部変わる」は違います。どれくらい変わるのか、どこが変わってどこが変わらないのかは、数えれば分かるはずです。
海外に、同じ質問を17週間ずっと投げ続けた調査があります。ドイツのSEOツールベンダー SISTRIX が2026年4月に出した「AI Citation Drift」です。これを読み、あわせて引用元の寿命を追った調査を2本読みました。そのうえで、手元に溜めている日本語の観測データを、同じ数え方で並べ直しました。
30秒でわかる結論
- ChatGPT Search が引用するサイトは、1週間で74%が入れ替わっていました(SISTRIX・17週・6カ国)
- 一方で Google AI Mode では、86.5%の質問に毎回引用される1〜5サイトがありました
- 引用されたページの44%は一度きりで、その後は現れませんでした(Writesonic・2,300万件)
- 「毎回変わるから追えない」ではなく、サイトとページを分けて数えると、見え方が変わります
この記事で扱う範囲
海外3調査の読み方/その見立てを日本語の観測で確かめた結果/この記事から言えないこと
まずは、1週間でどれだけ入れ替わったのかを見ます
SISTRIX の調査は、規模より先に、続け方のほうに目が行きました。
- 82,619プロンプト
- 1,548,213スナップショット
- 6カ国(ドイツ・アメリカ・イギリス・イタリア・スペイン・フランス)
- 3プラットフォーム(Google AI Mode / Google AI Overviews / ChatGPT Search)
- 17週連続(2025年12月17日〜2026年4月8日)
AI検索の調査は数多く出ていますが、その多くは「ある時点で大量に集めた」ものです。その取り方では、引用元がどれだけ入れ替わるかは原理的に測れません。同じ質問を、時間を空けて、何度も投げ直して、はじめて入れ替わりが数になります。地味な作業を17週やり切った調査は、ほかにあまり見当たりませんでした。
出ている数字が、1週間あたりの引用ドメインの入れ替わり率です。17週のあいだに、引用されたドメインのうちどれだけが前の週から入れ替わったかを、プラットフォーム別に平均した値です。
| プラットフォーム | 週あたりの入れ替わり |
|---|---|
| Google AI Overviews | 5% |
| Google AI Mode | 56% |
| ChatGPT Search | 74% |
※1 SISTRIX「AI Citation Drift」(2026年4月)より。82,619プロンプト・6カ国・17週間の観測。
ChatGPT Search は、1週間で引用ドメインの4分の3が入れ替わっていました。
この数字は、特定の国や言語の話ではありません。AI Mode の入れ替わり率は、調査した6カ国すべてで54〜59%に収まっていました。どこで測ってもほぼ同じで、17週を通じて落ち着く様子もありません。SISTRIX はこれを一時的な現象ではなく、構造的な特徴だと書いています。
同じ「AI検索」でも、入れ替わりの速さは15倍ちがいました
上の表をもう一度見てください。Google AI Overviews は週5%、ChatGPT Search は週74%。同じ「AI検索」という言葉でまとめられているのに、15倍近い開きがあります。
AI Overviews では、53%のプロンプトが17週間を通じて引用元を一度も変えていませんでした。半分以上が、4か月間ずっと同じ顔ぶれのままです。ChatGPT の隣に置くと、別のものに見えます。
私たちは「AI検索対策」「GEO対策」と、ひとつの言葉で語りがちです。入れ替わりの速さがこれだけ違うなら、測り方も分けて考えることになります。AI Overviews は一度入れば居座れる代わりに、席がめったに空きません。ChatGPT Search は毎週のように席が空く代わりに、座り続けるのが難しい。同じ「引用されたい」でも、確かめるべきことが変わります。
手元の観測でも、ChatGPT と Gemini を同じ数え方で並べると、2つのAIを「AI」とひとまとめにして語るのは難しいと感じています。6の節で、その数字を出します。
毎回かならず引用されるサイトが、1〜5件ありました
この調査でいちばん引っかかったのが、ここです。
AI Mode のプロンプトの86.5%には、安定して引用され続ける1〜5個の「固定核(stable core)」がある。残りは週89%のペースで入れ替わっている。
全部が毎回変わるのではありませんでした。決まった数席が指定席になっていて、残りの席が猛烈な勢いで回転している。私が持っていたイメージは「全体が均一にシャッフルされる」でしたが、実際は二層に分かれていました。上澄みは動かず、その下が激しく動いています。
この固定核は AI Mode の数字です。ChatGPT Search では様子が違いました。真ん中あたりのプロンプトには、17週すべてに登場したドメインが1つもありません。AI Mode では固定核の中央値がおよそ2ドメインですから、指定席があるかどうかすらプラットフォーム次第、ということになります。
消えていたのは、サイトではなくページでした
別の角度の数字を2本あげます。
Writesonic は2026年4〜6月に、2,300万件の引用元を追跡しています(Foundation Inc. のレポート経由で知りました)。引用されたページの44%は、一度きり登場して、その後は現れませんでした。生き残った引用でも、個別URLの引用寿命は典型的に11〜15日です。
8つのAIモデルを10か月追いかけた Trakkr の調査(URL 108,650件)でも、73.5%のURLが一度きり登場したまま戻ってきていません。別々の調査で、近い数字が出ています。
ここで、SISTRIX の「ドメインには固定核がある」と、Writesonic・Trakkr の「URLは短命」を並べます。数えている単位が違うことに気づきます。前者はサイトを数え、後者はページを数えています。
2つの調査を重ねて、私が立てた見立て
ここからは、私の見立てです。上の数字から直接は出てきません。
「引用元が毎回変わる」の正体は、サイトが総入れ替えされていることではなく、同じサイトの中で毎回別のページが選び直されていることだと考えています。指定席を持っているのはサイトのほうで、その席に毎回どのページを送り込むかが変わっている。
そう読むと、44%のページが一度きりで消えるのに、ドメインは安定していられる、という一見ぶつかる数字が両立します。
ただ、この見立てには弱いところがあります。SISTRIX と Writesonic は、別々の調査です。対象のプラットフォームも期間も違います。片方でサイトを数え、もう片方でページを数えた結果を、同じ現象の表と裏として読んでよいかは、この2本だけでは決められません。
同じデータの中で、サイト単位とページ単位を両方数えれば確かめられます。手元の観測データなら、それができました。
日本語のChatGPTとGeminiでも、確かめました
法律事務所・会計ソフト・化粧品・クレジットカード・転職エージェントの5業界で、各30問を6回ずつ聞いた観測があります。同じデータを、サイト単位とページ単位の2通りで数え直しました。
結果は、上の見立てと同じ向きでした。ChatGPTは同じサイトの中から毎回別のページを引用し、Geminiは同じページを引用し続けていました。指定席を持っているのはサイトのほうで、そこに送り込むページが毎回選び直されている、という形です。
数字と数え方は、実験の記事にまとめてあります。
ひとつ気をつけたいのは、この観測が海外の3調査と同じものを測っているわけではない点です。プラットフォームも期間も違います。確かめたのは「サイトとページを分けて数えると見え方が変わる」ところまでで、SISTRIX の数字を裏づけたわけではありません。
海外3調査から言えないこと
この数字の読み方
SISTRIX の86.5%と、この記事の観測結果を「一致した」とは読めません。SISTRIX は Google AI Mode を17週間、こちらは ChatGPT と Gemini を1週間で6回です。プラットフォームも期間も違います。
- 3本とも、自社で取ったデータではありません。数え方や期間は、それぞれの発表者の定義によります
- 打ち手の効果は分かりません。どの調査も観測で、直す前と後を比べた実験ではありません
- SISTRIX と Writesonic を重ねた見立ては、まだ見立てです。別々の調査なので、片方がサイト、もう片方がページを数えた結果を、同じ現象の表と裏として読んでよいとは決まっていません
- SISTRIX の調査対象6カ国に、日本は入っていません
よくある質問
Q AIの引用元は、どれくらいの頻度で入れ替わるのですか?
プラットフォームによって大きく違います。SISTRIX が17週間・6カ国で数えた結果では、1週間あたりに入れ替わった引用ドメインの割合は、Google AI Overviews で5%、Google AI Mode で56%、ChatGPT Search で74%でした。同じ「AI検索」という言葉でまとめられていても、15倍近い開きがあります。なお、この調査の対象6カ国に日本は入っていません。日本語での頻度は、別に観測する必要があります。
Q 一度AIに引用されたら、そのまま引用され続けるのですか?
Writesonic が2,300万件の引用元を追った調査では、引用されたページの44%が一度きり登場して、その後は現れませんでした。8つのAIモデルを10か月追った Trakkr の調査(URL 108,650件)でも、73.5%のURLが一度きりです。一方、サイト単位で見ると話が変わります。Google AI Mode では、86.5%の質問に毎回引用される1〜5サイトがありました。ページは入れ替わり、サイトは残る、という形です。
Q GEO対策は、ChatGPTとGeminiで同じことをすればいいのですか?
同じようには測れません。日本語で5業界を観測したところ、ChatGPTは同じサイトの中から毎回別のページを引用し、Geminiは同じページを引用し続けていました。記録をURLで残すか、サイトの名前で残すかが変わります。数字は別の記事にまとめました。どう直せば引用されるかは、この観測からは分かりません。
まとめ
「AIの引用元は毎回変わる」は、半分だけ本当でした。サイトの一部は指定席のまま動かず、ページのほうが激しく入れ替わっています。少なくとも、私たちが数えた5業界ではそうでした。
そう考えると、「AIに引用されました」と「AIに毎回引用されます」は、別のことを指しています。前者は、週89%で回転している席にたまたま座った瞬間かもしれません。実際、引用されたページの44%は一度きりで消えています。一度の引用をスクリーンショットに撮って報告することに、どれだけの意味があるのか。これは自分への問いでもあります。
確かめる順番は、ひとつ前に戻ります。どう書けば引用されるかの前に、自分は指定席側にいるのか、回転している自由席側にいるのか。それは同じ質問を数回投げて、サイト単位とページ単位の両方で数えれば分かります。
ひとつ付け加えます。引用元が入れ替わっても、回答に挙がる社名のほうは毎回同じことがあります。6業界で数えたところ、6回とも同じ名前が挙がった質問は、どの業界にもありました。引用と言及は別に数える必要があります。
参照した調査
- SISTRIX「AI Citation Drift: How stable are sources in AI search results?」(2026年4月)
82,619プロンプト / 1,548,213スナップショット / 6カ国 / 3プラットフォーム / 2025年12月17日〜2026年4月8日 - Writesonic の引用元追跡調査(2026年4〜6月、2,300万件)
Foundation Inc. のレポート経由で把握 - Trakkr「The Half-Life of AI Citations」
URL 108,650件 / 8モデル / 2025年6月1日〜2026年3月30日