著者:喜多 陽平 / Kita Yohei
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検索結果やAIの回答だけで疑問が解決し、Webサイトをクリックせずに情報収集を終える「ゼロクリック」が広がっています。

ただし、企業にとって重要なのは「クリックが減る」という現象だけではありません。

これまでWebマーケティングでは、

検索 → クリック → サイト訪問 → 情報収集 → 比較 → 問い合わせ・購入

という流れを前提に考えることができました。

しかしAI検索や検索結果上の直接回答が広がると、ユーザーはサイトを訪問する前に、商品やサービスについて知り、複数の候補を比較し、場合によっては購入候補まで絞り込めるようになります。

つまりゼロクリック化によって変わるのは、クリック数だけではありません。「サイト訪問がファネルの入口である」という前提そのものが変わり始めています。

30秒でわかる結論
  • ゼロクリック化とは、検索結果やAI回答上で情報取得が完結し、Webサイトへのクリックが発生しない、または必要性が下がることです。
  • AI以前から強調スニペットやナレッジパネルなどによるゼロクリックはありましたが、AI Overviewsや対話型AIでは、説明・比較・候補提示まで回答内で進む場面があります。
  • その結果、従来はサイト訪問後に行われていた情報収集・ブランド認知・比較・候補絞り込みの一部が、サイト訪問前にも進むようになります。
  • WebサイトやSEOが不要になるわけではなく、詳細確認・仕様・価格・一次情報・問い合わせ・購入などの重要な役割は引き続き残ります。
  • 企業側も、検索順位や流入だけでなく、AI回答で自社が正しく説明されているか、言及・引用されているか、比較・推薦候補に入っているかまで確認する必要があります。

ゼロクリック化とは

Zero Click Search(ゼロクリックサーチ)とは、ユーザーが検索したあと、外部サイトへのリンクをクリックせず、検索結果画面などに表示された情報だけで検索行動を終える状態を指します。

ゼロクリック自体は、生成AIが登場する以前から存在していました。

  • 天気
  • 為替
  • 電卓
  • 強調スニペット
  • ナレッジパネル
  • Googleマップ

などでは、Webサイトを開かなくても必要な情報を取得できることがあります。

詳しい定義は、Zero Click Searchとは(用語集)で解説しています。

現在、この動きをさらに考える必要がある理由の一つが、AI OverviewsやChatGPTなど、回答そのものを生成・提示するサービスの普及です。

AI検索では、従来のリンク一覧に加えて、質問に対する説明や要約、場合によっては複数の商品・サービスの比較や候補まで提示されます。

そのためユーザーは、サイトを訪問する前の段階で、これまで以上に多くの情報を得られるようになっています。

ゼロクリック化で何が変わるのか

変化を一言で表すなら、

「クリックしないと先へ進めなかったファネル」から、「クリックしなくても途中まで進めるファネル」への変化です。

従来の検索行動を単純化すると、次のように考えられました。

検索

検索結果を見る

クリック

サイト訪問

情報収集

比較・検討

問い合わせ・購入

企業はこの流れを前提として、検索順位、CTR、オーガニック流入、サイト内の回遊、CVRなどを見てきました。

一方、AI検索を含む現在の情報探索では、次のような経路も生まれています。

検索・AIへの質問

回答を読む

商品・サービスについて知る

複数候補を比較する

候補を絞る

必要に応じてサイトを訪問する

詳細確認・問い合わせ・購入

重要なのは、サイト訪問がなくなったのではなく、サイト訪問の前に進む情報処理が増えたことです。

従来のファネルとAI時代のファネルはどう違うのか

従来と現在を比較すると、違いが分かりやすくなります。

フェーズ 従来の検索中心の行動 ゼロクリック・AI検索を含む行動
情報収集 検索して複数サイトを読む 検索結果やAI回答だけでも概要を把握できる
ブランド認知 サイトを訪問して企業や商品を知る AI回答内でブランド名を知る場合がある
比較 複数サイトや比較ページを自分で確認する AIが候補や違いを整理する場合がある
候補絞り込み サイトを見ながら自分で判断する 条件を伝えて候補を絞ってもらう場合がある
サイト訪問 情報収集の早い段階で発生 詳細確認や最終判断の段階で発生する場合がある
購入・問い合わせ サイト内で実行 引き続き公式サイトなどが重要な接点になる

もちろん、すべてのユーザーがこの順番で行動するわけではありません。

商材、検索意図、価格、検討期間などによって行動は異なります。

ただし、「まず企業サイトへ行かなければ比較できない」という前提は、以前より弱くなっています。

サイト訪問前に進む4つの行動

1. 情報収集

最も分かりやすい変化です。

「〇〇とは?」「〇〇のメリットは?」「〇〇と△△の違いは?」といった質問では、検索結果やAI回答だけで概要を理解できることがあります。

ユーザーにとっては効率的ですが、企業側から見ると、これまで情報収集段階で発生していたページビューやセッションが発生しない場合があります。

2. ブランド認知

サイトを訪問していなくても、AI回答の中に企業名・ブランド名・サービス名が登場すれば、その時点でブランドとの接点が生まれます。

たとえば、

「EC向けのCRMでおすすめは?」

という質問に対して複数サービスが紹介されれば、ユーザーは各社のサイトをまだ訪問していなくても、そのブランド名を認識できます。

ただし、AI回答に名前が出たからといって、必ず記憶されたり購入につながったりするわけではありません。

重要なのは、サイト訪問を伴わないブランド接点も存在するようになったことです。

3. 比較

AIは質問内容によって、複数の選択肢を整理して提示する場合があります。

たとえば、

  • 「AとBは何が違う?」
  • 「初心者にはどちらが向いている?」
  • 「料金と使いやすさで比較して」

といった質問です。

これまでユーザー自身が複数ページを開いて整理していた情報の一部を、検索結果やAI回答上で取得できるようになります。

つまり、比較という行動の一部がサイトの外側でも進むということです。

4. 候補絞り込み

さらに、

  • 「従業員100人程度の企業ならどれが向いている?」
  • 「予算5万円以内ならどれ?」
  • 「初心者でも使いやすいものを3つ教えて」

のように条件を追加すれば、AIが候補を絞って提示する場合があります。

この段階まで進むと、ユーザーが初めて企業サイトを訪れた時点ですでに、

「何のサービスなのか」を知るためではなく、「この候補で本当に問題ないか」を確認するために訪れている可能性もあります。

これが、サイト訪問の役割が変化していると考える理由です。

サイト訪問はなくなるのか

なくなるとは言えません。

検索結果やAI回答で概要を把握できても、

  • 正式な価格
  • 最新の製品仕様
  • 契約条件
  • 詳細な導入事例
  • 独自調査
  • 公式な会社情報
  • 問い合わせ
  • 申込み・購入

などは、公式サイトで確認する必要がある場面があります。

Google自身も、AI OverviewsやAI Modeについて、回答とともにWebへのリンクを提示し、さらに詳しい情報へアクセスできる設計を説明しています。

参考:Google Search Central「AI features and your website」

そのため、「ゼロクリック化=Webサイトが不要になる」と考えるのは適切ではありません。

変わる可能性があるのは、どの段階でサイトが訪問されるのかです。

情報収集の最初からサイトへ来るユーザーだけでなく、AIなどである程度の情報を得たあと、詳細確認のために訪問するユーザーも想定する必要があります。

AI検索による流入数・CV・CVRの変化については、AI検索で流入は減ってもCVが落ちない?検索行動・SEOの変化を解説で詳しく整理しています。

SEOは不要になるのか

SEOは不要になりません。

GoogleはAI OverviewsやAI Modeについても、従来のSEOの基本が引き続き有効であり、AI機能だけを対象とした特別な最適化は必要ないと説明しています。

参考:Google Search Central「AI features and your website」

検索エンジンやAIがWeb上の情報を利用する以上、クロールできること、内容が分かりやすいこと、独自で有用な情報があること、情報が正確であること、ページ同士の関係が整理されていることなどは引き続き重要です。

一方で、「検索順位を上げ、クリックを増やす」だけでユーザーとの接点をすべて把握できるとは限らなくなっています。

Genviewが15業界・450クエリを対象に行った調査では、ChatGPT・Geminiが回答時に引用したURLのうち、同じクエリのGoogle検索上位10位にも登場していた割合は合算で25.0%でした。

ChatGPTでは13.9%、Geminiでは29.0%で、同じ質問でもAIによって引用元の傾向に違いが見られました。

この調査は、SEO順位とAI引用の因果関係を示すものではありません。

ただし、SEO順位だけを見ても、AI回答で自社がどう扱われているかを十分に把握できないことは確認できます。

参考:Genview「SEO上位サイトはAIにも引用されるのか?15業界450クエリをChatGPT・Geminiで調査」

AI検索そのものが、どのように情報を取得して回答を生成するかは、AI検索の仕組みとは|情報取得からLLMによる回答生成までで解説しています。

企業が見るべき指標はどう変わるのか

ゼロクリック化が進むからといって、従来の指標を捨てる必要はありません。

検索順位、CTR、流入数、CV、売上はいずれも引き続き重要です。

ただし、それだけではサイト訪問前の接点が見えにくくなります。

AI回答については、少なくとも次の4つを分けて確認すると整理しやすくなります。

言及

AI回答の文章中に、自社名・ブランド名・商品名が登場しているか。

引用・参照

自社ページが回答の根拠や情報源として利用されているか。

比較・推薦

「おすすめ」「比較」「どれが向いているか」といった質問で、自社が候補として扱われているか。

情報の正確性

AIが自社の特徴、対象者、機能、強みなどを正しく説明しているか。

この4つは同じものではありません。

たとえば、自社ページが情報源として引用されても、回答本文でブランド名が紹介されないことがあります。

反対に、ブランド名が推薦候補に入っていても、自社サイトが引用元ではない場合があります。

したがって、「AIに出ているか」だけではなく、どのように出ているかまで確認する必要があります。

AI引用・言及・推薦の違いについては、AI引用とは?言及・推薦との違いとAIが参照する情報源を解説で詳しく説明しています。

GenviewでAI回答内の接点を確認する

ゼロクリック化によってサイト訪問前の接点が増えると、それまでアクセス解析だけでは確認できなかった領域を見る必要があります。

Genviewのクエリ改善では、自社にとって重要な質問をクエリとして設定し、ChatGPTやGeminiなどの回答を継続的に確認できます。

たとえば、

  • 「EC向けのおすすめCRMは?」
  • 「A社とB社ならどちらが向いている?」
  • 「〇〇に悩んでいる企業にはどのサービスが合う?」

といった、自社が選ばれたい質問です。

その回答について、

  • 自社が言及されているか
  • どの情報源が参照されているか
  • 比較・推薦候補に入っているか
  • 自社についてどのように説明されているか

を確認することで、サイト流入だけでは見えないAI上の接点を把握できます。

一方、実際にAIサービスからWebサイトへ訪問したユーザーについては、GenviewのAI流入分析(GA4)で確認できます。

「AI回答内でどう扱われているか」と「AIから実際にどれだけサイトへ流入したか」は、分けて見る必要があります。

GEOが必要になる理由

ゼロクリック化した環境では、ユーザーが企業サイトへ来る前に、AIから企業やサービスについて説明を受ける場面があります。

そのため企業側では、AIに自社がどう理解され、どの質問で言及され、どの情報が参照され、どのような比較・推薦候補として扱われているのかを確認する必要が出てきます。

GEO(Generative Engine Optimization/生成エンジン最適化)は、生成AI・AI検索上で、自社やブランドが正しく理解され、情報源として参照され、必要な場面で言及され、比較・推薦の候補として扱われる状態を整える取り組みです。

ただし、GEOは「ゼロクリック対策」だけを意味するものではありません。また、SEOを置き換えるものでもありません。

GEOの定義やSEOとの関係、具体的に何をするのかは、GEO対策とは?|生成エンジン最適化の意味・SEOとの違い・始め方を解説で詳しく解説しています。

よくある質問

Q

ゼロクリック化が進むと、サイトへの流入は減りますか?

A

検索結果やAI回答だけで情報取得が完結する場合、クリックが発生しないため、クエリやサイトによっては検索流入へ影響する可能性があります。ただし、すべてのサイトや検索クエリで一律に流入が減るとは限りません。ゼロクリック率やCTRだけでなく、CV、CVR、指名検索、AI経由流入なども合わせて確認することが重要です。

Q

ゼロクリック化するとSEOは意味がなくなりますか?

A

いいえ。AI OverviewsやAI Modeについても、Googleは従来のSEOの基本が引き続き有効だと説明しています。重要なのはSEOをやめることではなく、検索順位・流入に加えて、AI回答上で自社がどのように扱われているかも確認することです。

Q

AI回答にブランド名が出れば、成果と考えてよいですか?

A

ブランド名の言及は新しい接点の一つですが、それだけで売上や問い合わせにつながったとは判断できません。言及、引用、比較・推薦、説明の正確性を確認しながら、実際の指名検索、サイト流入、CV、売上なども合わせて見る必要があります。

Q

自社がAIの回答に登場しているか確認できますか?

A

確認できます。ChatGPTやGeminiなどに、自社の顧客が実際に質問しそうな内容を入力して、ブランド名やサービス名が回答内に登場するかを確認する方法があります。継続的に複数クエリを確認する場合は、Genviewのクエリ改善で、AIごとの言及・参照状況などを確認できます。

Q

ゼロクリック化でマーケティングファネルはなくなりますか?

A

なくなるとは考えていません。ユーザーは引き続き情報を集め、比較し、検討し、購入します。変化しているのは、その一部が企業サイトを訪問する前にも進むようになったことです。そのため、「ファネルの消滅」というより、サイト訪問を必須としない形へのファネルの再構築と捉える方が適切です。

まとめ|ゼロクリック化で変わるのは「クリック」だけではない

ゼロクリック化というと、どうしても「検索流入が減る」という話に注目しがちです。

しかし、より大きな変化はその先にあります。

従来は、

検索 → クリック → サイト訪問 → 情報収集 → 比較 → 購入

という経路を想定しやすい環境でした。

現在は、

検索・AIへの質問 → 回答内で情報収集 → ブランド認知 → 比較・候補絞り込み → 必要に応じてサイト訪問 → 購入

という経路も生まれています。

つまり、ファネルがなくなったのではありません。ファネルの一部がサイトの外側へ移動し、「クリック」が必須の中間工程ではなくなりつつあるということです。

だからこそ企業は、検索順位や流入だけではなく、AIが自社を正しく説明しているか、ブランド名が言及されているか、自社情報が引用・参照されているか、比較・推薦候補に入っているかまで確認する必要があります。

ゼロクリック時代に重要なのは、「どうやってすべてのユーザーをクリックさせるか」だけではありません。ユーザーがサイトを訪れる前から、自社が正しく理解され、候補として認識される状態をどう作るか。そこまで含めてマーケティングファネルを捉え直す必要があります。

参考サイト

一次情報・公式情報

Genviewの独自調査・関連ページ