50代・60代はChatGPTを使わないのか?GEO対策の年齢仮説をデータで検証
著者:喜多 陽平 / Kita Yohei 公開日:2026年8月24日
先月、シニア向けの健康食品を扱うクライアントから、「うちのターゲットは50代・60代だから、GEO対策よりもGoogleのAI Overview(検索結果に出るAI要約)対策を優先すべきですよね?」と聞かれました。私は「そうですね」と即答したのですが、電話を切ったあとで、その根拠を自分の言葉できちんと説明できないことに気づきました。
「年齢層が高い人ほどChatGPTやGeminiは使わず、Google検索に留まっている」——これは業界でよく聞く前提ですが、いつ・どの調査で確認された話なのか、誰も出典を教えてくれません。気になったので、海外の調査データと日本の公的統計を、自分で並べて見てみることにしました。
⚠️ これは私個人の見解です
以下は、公開されている調査データを私(喜多)が読んで考えたことのまとめです。Genviewとしての公式見解ではなく、一人のGEO担当者としての仮説検証にすぎません。引用元はすべて記事末尾に明記していますので、気になった数字は元の調査で確認していただくのが一番だと思います。
結論を先に言うと
先に結論だけ書いておきます。「年齢が上がるほどAIチャットボットの利用率が下がる」のは事実です。ただ「50代以上はほとんど使わない」は、データを見る限り言い過ぎでした。日本の50代は約44%、60代でも3人に1人が生成AIの利用経験を持っています。米国のPew Research調査でも、65歳以上の23%がChatGPT・Gemini・Copilotのようなチャットボットを使ったことがあると回答しています。50代以上のtoC商材だからといって、Google検索内のAI Overview対策だけに絞る判断は、少なくとも2026年時点ではもう十分ではなさそうです。
仮説:50代以上はChatGPTを使わず、Google検索に留まっているのではないか
今回検証したい仮説はシンプルです。「toC商材のターゲットが50代以上の場合、GEO対策(ChatGPTやGemini本体に自社が認識・引用されるための対策)はまだ効果が薄く、Google検索のAI Overview対策を優先すべきだ」という仮説です。
この仮説の裏にある前提は、「年齢層が高いほどAIチャットボットの利用率は低く、検索エンジンへの依存度が高い」というものです。前提自体はおそらく方向としては正しいはずですが、「どれくらい低いのか」を数字で見たことがなかったので、そこを確認したいと思いました。
調査①:米国では、シニア層のチャットボット利用はどう変化しているか
まず参照したのは、米国のPew Research Centerが2026年6月に発表した調査です。この調査の質問文が良くできていて、「ChatGPT、Gemini、Copilotのようなチャットボットを使ったことがあるか」と、Google検索内のAI要約とは別に、チャットボット本体の利用だけを切り分けて聞いています。まさに今回知りたかった軸そのものでした。
※公開情報をもとに自社で作成(出典:Pew Research Center「How Americans' opinions and use of AI differ by age」2026年6月17日発表)
65歳以上の23%という数字だけ見ると「やっぱり少数派」という印象を受けます。ただPewは2024年の同じ調査との比較も出していて、2024年時点は50〜64歳25%、65歳以上12%でした。単純計算で2年でほぼ倍増しています。正直に書くと、Pew自身が「2024年は認知者のみに聞いた設問で、2026年は全員に聞いている」と設問方法の違いを注記しているので、この伸びをそのまま実利用の伸びと言い切るのは早計です。それでも、65歳以上でも4人に1人近くがチャットボットの利用経験を持つところまで来ている、という現在地は素直に受け止めていいデータだと思います。
調査②:日本と海外を同じ土俵で比べられる公的データを探す
次に日本側です。ここで一番助かったのが、総務省が2026年7月に公表した令和8年版情報通信白書(概要)でした。日本・米国・ドイツ・中国の4カ国を同じ設問で比較した、生成AI利用経験率の年齢層別データが載っています。「海外と日本を同じ軸で見る」という、今回一番やりたかったことがそのまま一次資料で取れたのは運が良かったです。
日本国内(2025年度調査)の年齢層別・生成AI利用経験率は次の通りです。
| 年齢層 | 利用経験率 |
|---|---|
| 15〜19歳 | 91.7% |
| 20〜29歳 | 78.2% |
| 30〜39歳 | 56.3% |
| 40〜49歳 | 49.0% |
| 50〜59歳 | 44.2% |
| 60〜69歳 | 33.5% |
全体では58.8%で、前年度(26.7%)からほぼ倍増しています。ただしこちらも白書側に注記があって、「2023・2024年度調査は20歳以上が対象だったが、2025年度調査では15〜19歳を新たに対象に加えた」とのことなので、前年比較には少し留意が必要です(調査というのは、こういう対象年齢や設問の微妙な変更が積み重なっていくものだと、改めて実感しました)。
さらに面白かったのが、同じ白書に載っている60〜69歳の国際比較です。
※公開情報をもとに自社で作成(出典:総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」2026年7月公表)
「60代のAI利用率」という同じ切り口で見ても、国によってかなりの差があります。今回参照した4カ国の中では、日本の60代がもっとも低い部類でした。中国の86.5%は別次元ですが、それを抜いても、米国・ドイツと比べて日本の60代はまだ低めというのが実態のようです。
ここで一つ、正直に注意しておきたいことがあります。この総務省データの「生成AI利用経験率」と、調査①のPewの「AIチャットボットを使ったことがあるか」は、聞き方も調査時期もまったく別物です。実際、総務省調査の米国60代は51.0%なのに、Pewの米国65歳以上は23%と、同じ米国のシニア層でもかなり数字が違います。調査手法もデータセットも別物なので、この2つをそのまま並べて「米国のシニアは○%」と一言でまとめることはできません。ただ、どちらの調査でも「年齢が上がるほど利用率は下がるが、シニア層でも無視できない規模の利用者がいる」という方向性自体は一致しています。
結果:仮説は半分正しく、半分外れていた
最初の仮説、「50代以上はChatGPTやGeminiをほとんど使わず、Google検索に留まっている」を検証した結果は、半分正しく、半分外れていたというのが私の見立てです。
正しかったのは、年齢が上がるほど利用率が下がるという傾向そのものです。日本の60〜69歳(33.5%)は20代(78.2%)の半分以下ですし、米国のPew調査でも65歳以上(23%)は18〜29歳(66%)の3分の1程度です。これは海外・日本のどちらでも共通していました。
外れていたのは、「ほとんど使わない」という前提のほうです。日本の50代は44.2%、つまり半数近くが生成AIの利用経験を持っています。60代でも33.5%、3人に1人です。米国のPew調査でも50〜64歳は42%、65歳以上でも23%が使ったことがあると答えています。これは「ターゲットの大半が使っていない」と切り捨てられる規模の数字ではありません。
この結果を踏まえて、私自身は考えを少し改めました。高齢層ほど検索エンジンへの依存度が高い、という傾向自体は各種調査で見られるので、AI Overview対策を最初の一手にする判断は今も理にかなっていると思います。ただ、50代で約半数、60代でも3人に1人という規模になってくると、ChatGPTやGemini本体でどう認識・引用されるか(狭義のGEO対策)も、すでに無視できない領域に入っていると言えそうです。あのクライアントへの回答は、次にお会いするときに更新しようと思っています。
よくある質問
Q. 50代・60代は本当にChatGPTやGeminiを使っているのか?
A. 一定数使っています。総務省・令和8年版情報通信白書(2025年度調査)では、日本の50〜59歳で44.2%、60〜69歳で33.5%が生成AIの利用経験を持つと回答しています。米国のPew Research(2026年6月発表)でも、50〜64歳で42%、65歳以上で23%がChatGPT・Gemini・Copilotのようなチャットボットを使ったことがあると回答しています。
Q. 日本の50代と海外(米国)の50代を、同じ数字で比較していいのか?
A. 単純比較はおすすめしません。調査によって「生成AI利用経験」と「AIチャットボット利用経験」で問い方が違い、調査時期も対象年齢の区切りも異なります。同じ米国のシニア層でも、総務省調査(60代51.0%)とPew調査(65歳以上23%)でこれだけ差が出ることが、その難しさをよく表しています。国・調査ごとの数字は、あくまで「その調査の中での傾向」として読むのが安全です。
Q. では、50代以上向けのtoC商材のGEO/AEO対策はどこから始めるべき?
A. 「高齢層だからAI Overview対策だけで十分」と一括りにしないことが第一歩だと思います。検索エンジンへの依存度が高い傾向は確かにあるので、AI Overview対策を先行させるのは合理的ですが、ターゲットの年代の3人に1人〜2人に1人が生成AIの利用経験を持つ規模になっている以上、ChatGPTやGemini本体での自社の認識・引用のされ方(GEO対策)も並行して見ていく必要があります。
まとめ
「年齢層が高いほどAIチャットボットを使わない」という傾向自体は、海外・日本のどちらのデータでも確認できました。しかし、その傾き方は緩やかで、50代・60代にもすでに相当数の利用者がいます。また、日本の50代・60代と米国の50代・60代を同じ数字で語るのは危険で、総務省の国際比較を見る限り、日本のシニア層のAI利用率は米国・ドイツ・中国よりも低めに出ています。toC商材のGEO/AEO対策を考える際は、「50代以上=Overview対策だけで十分」と一括りにせず、ターゲットの年代・国・利用シーンごとに、Overview対策とチャットボット本体対策の比重をそのつど見直すのが実態に近いのではないかと思います。
関連記事
参考文献・調査ソース
本文で使用した主要データ
- Pew Research Center:How Americans' opinions and use of AI differ by age(2026年6月17日発表)
- Pew Research Center:Americans and AI 2026 Report(PDF・原資料)
- 総務省:令和8年版情報通信白書(概要)(2026年7月公表)
その他、参考にした記事・データ(本文の数値には未使用)
以下は執筆にあたって目を通したものの、年代別の一次データを確認できなかったため、本文の主張の根拠には使わなかった記事です。方向性としては本文の内容と矛盾しませんが、数値の精度は保証できないため参考情報として置いておきます。
- Ofcom:Adults' Media Use and Attitudes Report(英国・2026年4月公表)
- Arfadia:How UK Adults Actually Use AI Search: Ofcom Data(Ofcomデータの二次まとめ)
- ICT総研:2026年2月 生成AIサービス利用動向に関する調査
- NTTドコモ モバイル社会研究所:生成AI利用率、過半数に。1年で急増(2026年4月6日)
- 時事通信:生成AI、個人の6割利用=前年から倍増―情報通信白書
- eMarketer:Gen X is outpacing younger adults on AI chatbots(Gracenote調査ベース)
- OECD.AI:How people are using GenAI chatbots: Evidence from web traffic data