著者:喜多 陽平(Genview チームリーダー / 株式会社FID) 公開:2026-06-15

AIはサービスを使ったことがないので、公開されている情報からしか会社を選べません。

ChatGPTに「おすすめの転職エージェントを教えて」と聞くと、数社のサービスが紹介されます。では、その会社は本当に、市場で選ばれている会社なのか。

私は、必ずしもそうではないと思っています。売れているのにAIに選ばれない会社もあれば、AIに選ばれているのに売れない会社もあります。AIに選ばれる会社と、人に選ばれる会社は、似ているところはあっても、同じ基準で選ばれているわけではありません。

この記事では、AIと人が会社を選ぶときに見ているものの違いと、そこから生まれる2つのずれを、弊社の調査のデータとあわせて考えます。

30秒でわかる結論

  • 化粧品では、AIの引用のうち、口コミやSNSなど利用者の投稿が各回8.0〜12.4%ありました
  • 用途の合わない商品について「おすすめする理由は?」と聞くと、Gemini は12回とも、そのまま勧めました
  • 同じ質問を6回聞いて、6回とも同じ名前が挙がった質問は、業界とAIによって32.1〜95.7%でした
  • AIに選ばれる会社と人に選ばれる会社は、重なっても同じではありません。GEOの役割は、「良い会社なのに選ばれない」を減らすことだと考えています

この記事で扱う範囲

AIと人が見ているものの違い/売れているのにAIに選ばれない会社/AIに選ばれているのに売れない会社/GEOの役割(AIの推薦と売上の関係の詳細は扱いません)

AIと人は、会社を選ぶときに何を見ているか

AIと人では、会社を選ぶときに見ているものが違います。

AIと人が、会社を選ぶときに見ているもの(筆者の整理)

AIが見ているもの 人が見ているもの
公開されている情報の量 実際に使った体験
外部のサイトでの言及(Webに書かれた口コミを含む) 知り合いから聞いた口コミ
情報がそろっているか 信頼できると感じるか
FAQ・導入事例・記事 営業担当やサポートの対応
説明しやすいか 価格・条件

AIは、実際にサービスを使ったことがありません。材料にできるのは、公開されている情報だけです。人は、営業担当の対応や価格、導入後のサポートまで含めて判断します。営業の話を聞き、デモを触り、価格を交渉して決める。AIには、この過程がありません。

口コミは、AIの側にもあります。人から直接聞いた口コミはAIに届きませんが、Webに書かれた口コミは引用されます。弊社が5業界で30問を6回ずつ聞いた調査では、化粧品で、AIの引用のうち口コミやSNSなど利用者の投稿が各回8.0〜12.4%ありました。法律事務所では0.4〜1.3%で、業界によって差があります(出典:株式会社FID/Genview「ChatGPTとGeminiが引用するサイトは、業界でこんなに違う」2026年9月)。

AIが会社を「何者か」として理解し、候補に挙げるかどうかには、この公開された情報の積み重ねが効いていると私は考えています。AIが会社をどう理解するかは、AIに自社を正しく認識(言及・推薦)してもらうには?会社・ブランド情報を整える方法で解説しています。

売れているのに、AIに選ばれない会社

業界では知られた存在で、顧客満足度も高い。それでもAIには挙がらない、という会社があります。

中身を見ると、Webサイトはブランドイメージが中心で、導入事例は「某大手企業様」という書き方にとどまっている。よくある質問には営業担当が口頭で答えてきたので、サイトには載っていない。評判は業界の中の口コミで回っていて、Webに文字として残っていない。情報がないのではなく、AIが読める形で公開されていない状態です。

2000年代には「Webサイトを持たない会社は見つけてもらえない」と言われました。私は今、同じことがAIで起き始めていると感じています。今回は、Webサイトを持つだけでは足りません。この状態で確かめることは、ChatGPTで競合ばかり出てくるのはなぜ?共通していた3つの勘違いと、確かめ方にまとめています。

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AIに選ばれているのに、売れない会社

逆のケースもあります。AIにはよく挙がるのに、売上や顧客満足度はそれほど高くない会社です。

AIに推薦されたことは、その会社や商品が良いという評価とは限りません。弊社の実験では、公式の説明で用途が違うと分かる化粧品について、「30代で敏感肌の人に、この商品をおすすめする理由を教えてください」と聞きました。3つのAIに合わせて36回聞いて、その条件の人には勧めずに別の商品を挙げたのは2回でした。Gemini は12回とも、注意点に触れながらも、そのまま勧めています(出典:株式会社FID/Genview「AIに「その回答の根拠は?」と聞いても、返ってくるのは判断の根拠とは限らない」2026年9月)。

AIの推薦は、毎回同じでもありません。6業界で各30問を ChatGPT と Gemini に6回ずつ聞いた調査では、名前が挙がった質問のうち、6回とも同じ名前が挙がった質問は、業界とAIによって32.1〜95.7%でした(出典:株式会社FID/Genview「AIの回答は毎回違う。それでも同じ企業名は毎回言及される」2026年9月)。ある会社が6回中4回挙がるのは、「6回中4回、候補に入る」ということで、その会社が良いという判定ではありません。

AIに推薦されても、そのあとには人の判断が入ります。営業の対応、価格、デモの出来で、最後の選択は決まります。AIの推薦は、検討する候補に入る段階です。引用や推薦と売上の関係は、AIに引用されても売上は増えない|GEOで見るべき指標とはで扱っています。

私は、このケースはGEOの問題というより、マーケティング全体の問題だと考えています。AIに選ばれやすい状態を作ることと、人に選ばれる価値を持つことは、本来ぶつかりません。

GEOの役割は、「良い会社なのに選ばれない」を減らすこと

ここで整理しておきたいことがあります。

GEOの目的は、AIをだまして推薦させることではありません。本来持っている価値を、AIが正しく理解できる状態を作ることです。導入事例や比較の説明、よくある質問を公開する。E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を示す情報をそろえる。自社が何者かを、AIが取り違えない形で書く。どれも「すでに持っている価値をAIに伝える作業」です。

「良い会社なのに選ばれない」を減らすこと。これがGEOの役割だと私は考えています。

AIに選ばれる会社と、人に選ばれる会社が、完全に一致することはないかもしれません。それでも「AIにも人にも選ばれる会社」を目指すことはできます。そのためには、価値を伝える力と、実際に提供できる価値の両方が要ります。コンテンツだけを磨いてAIに挙がるようになっても、サービスが伴わなければ長続きしません。AIに選ばれることは、ゴールではなく入口です。

よくある質問

Q AIに選ばれる会社と、人に選ばれる会社は同じですか?

A

重なるところはありますが、同じではありません。AIはサービスを使ったことがないので、公開されている情報から会社を選びます。人は、使った体験や営業の対応、価格まで含めて選びます。そのため、売れているのにAIに挙がらない会社も、AIに挙がるのに売れない会社もあります。

Q AIに推薦されている会社は、良い会社だと考えてよいですか?

A

推薦は、良い会社だという判定とは限りません。用途の合わない化粧品について「おすすめする理由は?」と聞いた弊社の実験では、3つのAIに合わせて36回聞いて、勧めるのをやめたのは2回でした。推薦は「候補に入った」ということで、最後に選ぶのは人です。

Q 評判のよい会社なのに、AIに挙がらないのはなぜですか?

A

評判が、AIの読める形で公開されていないことが考えられます。業界の中の口コミや、営業担当が口頭で伝えてきた強みは、AIには届きません。導入事例、よくある質問、ほかの会社との違いが、Webに文字として書かれているかを確かめてください。

まとめ

AIと人は、会社を選ぶときに見ているものが違います。AIの材料は公開された情報だけで、人は体験や対応、価格まで含めて選びます。そのずれから、売れているのにAIに挙がらない会社と、AIに挙がるのに売れない会社が生まれます。AIの推薦は、同じ質問でも毎回同じではなく、良い会社だという判定でもありません。

だからこそ、GEOで目指すのは、AIに良く見せることではなく、すでに持っている価値をAIが読める形で伝えることだと考えています。

この記事を書いた人

喜多 陽平 / Kita Yohei

Genview チームリーダー / 株式会社FID

株式会社FIDにて、CRMツール「MOTENASU」および侍カートの営業・マーケティングを担当。海外のGEO・AI検索に関する最新情報をいち早くキャッチし、日本語で整理・発信することを得意としています。

GEOはまだ国内に一次情報が少ない領域です。海外のレポートや調査を正確に読み解き、日本のビジネス文脈で使えるかたちに届けることが、喜多の役割です。

専門領域:海外GEO・AI検索動向のリサーチ / SaaS・CRMツールの営業・マーケティング / 海外情報の翻訳・整理・発信

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