著者:吉田 清登(株式会社FID CMO / Genview PM) 公開:2026-05-25

GEO対策を始める前に決めるのは、施策ではなく、AIに自社をどう説明してほしいかです。

「GEO対策って、まず何をやればいいですか?構造化データですか?FAQですか?」。商談で、よくこう聞かれます。

構造化データも、FAQも、llms.txtも、外部メディアへの掲載も、必要になるかもしれません。ただ、どれから手を付けるかは、「AIの回答の中で、自社をどう説明してほしいのか」が決まっていないと選べません。理想が決まっていなければ、ChatGPTやGeminiの回答を見ても、それが良いのか悪いのかを判断できないからです。

ここでいう「理想のAI回答」は、ユーザーの質問に記事がどう答えるか、というコンテンツの側の答えではありません。ChatGPTやGeminiが自社について答えるとき、自社をどう説明してほしいか、という企業の側の理想です。

この記事では、なぜ理想のAI回答から決めるのか、どう決めるのか、決めたあと何を確かめるのかを、弊社の調査と実験のデータとあわせて整理します。

30秒でわかる結論

  • AIの回答は聞くたびに変わる。同じ質問を聞き直しても、引用されたサイトが同じだったのは多くても6割程度だった
  • AIに「根拠は?」と聞いても、判断の記録は返ってこない。最初の回答と同じURLが返ってきたのは、Geminiで2%だった
  • 名前が出ても、自社サイトが読まれているとは限らない。Geminiがキュレルの名前を挙げた回答のうち、キュレルのページも引用していたのは4.8%だった
  • 理想のAI回答とは、AIに自社を「何の会社として、誰向けに、どんな強みで」説明してほしいかを、企業の側で決めたもの。これが決まって初めて、今の回答とのズレが分かり、打つ手を選べる

この記事で扱う範囲

理想のAI回答とは/施策から始めない理由/AIの「認識」の見方/理想のAI回答の決め方/根拠の要る理由/今の回答の確かめ方/ズレの原因の探し方

理想のAI回答は、ユーザーへの答えではなく「自社の説明」

「理想の回答」という言葉は、2つの意味で使われています。どちらの話をしているかで、やることが変わります。

「理想の回答」の2つの意味と、この記事で扱うもの

  ユーザーの質問への理想の答え 理想のAI回答(この記事)
誰の立場か 記事を書く人・読む人 AIに説明される企業
何を決めるか 質問に、記事の冒頭で何と答えるか AIが自社について答えるとき、自社をどう説明してほしいか
使いみち 記事の書き方(結論を先に書く、など) 今のAIの回答と比べて、ズレを見つける物差し

記事の書き方の話は、SEO対策とGEO対策で、記事の書き方は違うのか?で扱っています。この記事は、右の列の話です。

GEO対策を、施策から始めない理由

GEO対策を調べると、すぐに「何をすればいいか」が並びます。

  • 構造化データを入れる、FAQを増やす、llms.txtを置く
  • AIのクローラーを許可する、一次情報を増やす、外部メディアで言及を増やす

分かりやすいので、ここから始めたくなります。ただ、先に施策を選ぶと、その施策で何を直したいのかがあいまいになります。

FAQを足しても、今のAIの回答で何が足りないのかが分からなければ、そのFAQが要るのかを判断できません。外部メディアで言及を増やしても、どんな文脈で自社を説明してほしいのかが決まっていなければ、社名が出るだけで終わるかもしれません。施策は、理想と今の回答のズレを埋めるために選ぶものです。

AIの「認識」は、実際の回答で見る

「AIに自社がどう認識されているか」と言うと、AIの中に「この会社は○○の会社だ」という決まったプロフィールがあって、それを確かめられるように聞こえます。けれども、企業の側からAIの中を見ることはできません。

AIに聞けば分かる、とも言えません。弊社の実験では、AIに「その回答の根拠のURLは?」と聞いても、最初の回答に表示されていた参考リンクと同じURLが返ってきた割合は、ChatGPTで39%、Perplexityで15%、Geminiで2%でした。会話の一言でおすすめが120回中119回変わったときも、その一言を決め手と説明したのは4割でした(出典:株式会社FID/Genview「AIに「その回答の根拠は?」と聞いても、返ってくるのは判断の根拠とは限らない 3つのAIに600回質問してわかったこと」2026年9月)。

AIの説明は、AIが実際に何を見て決めたかの記録ではありません。そこでこの記事では、「認識」を、実際のAIの回答の中で自社がどう説明されているか、という外から確かめられる状態として扱います。

理想のAI回答の決め方

理想のAI回答は、「AIに出たい」「おすすめされたい」ではありません。少なくとも、次の5つを言葉にします。

  1. 1

    何の会社・サービスとして説明されたいか

    例:メール配信ツールではなく、CRM・マーケティング支援ツール

  2. 2

    誰に向けたサービスか

    例:中小企業全般ではなく、EC・通販の事業者

  3. 3

    どんな課題を解決するか

    例:リピート購入が増えない、顧客データがばらばら

  4. 4

    どんな強みで説明されたいか

    例:LINE・メール・顧客データを一つにまとめて扱える

  5. 5

    どんな質問・検討の場面で候補になりたいか

    例:「EC向けのCRMのおすすめは?」と聞かれたとき

5つがそろうと、理想のAI回答を1〜2文で書けます。たとえば「EC・通販事業者向けに、LINE・メール・顧客データを一つにまとめて扱えるCRMで、リピート購入を増やしたい会社に向いている」。この文が、今のAIの回答と比べるときの物差しになります。

理想のAI回答と、実際のAI回答を並べてズレを見る 左に企業が決めた理想のAI回答、右に実際のAI回答を並べた例。理想にある「EC・通販向け」「CRM」「LINEとの連携」「顧客データの一元管理」のうち、実際の回答には「中小企業向けのマーケティングツール」としか出ておらず、4つの特徴が抜けている。 理想のAI回答(企業が決めたもの) EC・通販事業者向けに、 LINE・メール・顧客データを 一つにまとめて扱えるCRM 特徴:EC向け/CRM/LINE連携/ 顧客データの一元管理 実際のAI回答(ある日の1回) 中小企業向けの マーケティングツールです。 抜けている特徴:EC向け/CRM/ LINE連携/顧客データの一元管理
理想の文があって初めて、「中小企業向けのマーケティングツール」という回答から、4つの特徴が抜けていると分かります。幅広いマーケティングツールとして説明されたい会社なら、同じ回答でも問題ではないかもしれません。

AIに自社をどう理解してもらうかの考え方と、会社・ブランドの情報の整え方は、AIに自社を正しく認識(言及・推薦)してもらうには?会社・ブランド情報を整える方法で解説しています。Genviewのブランド認識改善では、理想の説明と実際の回答のズレを、AIごとに確かめられます。

理想のAI回答には、根拠が要る

理想を決めるときに忘れがちなのが、「そう説明されるだけの根拠が、本当にあるか」です。

「サポートが手厚い」「高品質」「導入しやすい」「業界に強い」は、どれも抽象的です。AIが会社やサービスを比べて説明するときの材料になるのは、対応範囲、料金、機能、導入社数、導入事例、調査結果、利用条件のような、確かめられる情報です。「数字を出せばAIに選ばれる」という話ではありません。自社が言いたい強みを、確かめられる情報で説明できる状態にしておく、ということです。

理想のAI回答は、広告のコピーではありません。実態に基づいて、どう説明されたいかを決めるものです。根拠になる情報の作り方は、GEO対策で使う一次情報の作り方で解説しています。

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今のAIの回答を、何度か聞いて確かめる

理想を決めたら、ChatGPTやGeminiに実際に聞いて、今の回答を確かめます。自社名、サービス名、自社が属するカテゴリ、比較やおすすめの質問、ユーザーが抱える具体的な課題の質問などです。どの質問を選ぶかは、GEO対策のクエリ設計とは?自社名なしで候補に入っているかを確かめる3つの軸で解説しています。

1回聞いただけでは判断しません。弊社の調査では、同じ質問を聞き直したときに引用されたサイトが同じだった割合は、ChatGPTで32.6〜63.0%、Geminiで38.0〜53.2%でした。同じ日に数分おきに聞いても、日を空けても、この割合は変わりませんでした(出典:株式会社FID/Genview「ChatGPTなどの生成AIは毎回違う回答をするのに、GEO対策は効果があるのか」2026年9月)。

名前の出方で見ると、様子が変わります。6業界で同じ質問を6回ずつ聞いた調査では、名前が挙がった質問のうち、6回とも同じ名前が挙がった質問が32.1〜95.7%ありました(出典:株式会社FID/Genview「AIの回答は毎回違う。それでも同じ企業名は毎回言及される」2026年9月)。1回ごとの回答は揺れても、何度か聞いて「何回中何回」で見れば、傾向はつかめます。

情報を更新した直後も、回答はまっすぐには変わりません。弊社が料金と機能を変えたとき、Geminiは一度新しい料金で答えたあと、翌日に古い情報へ戻り、名前の似た別の会社と混ぜて説明しました(出典:株式会社FID/Genview「AIの回答はいつ最新になる?自社の機能・価格変更を2週間観測してみた」2026年8月)。

ズレが分かってから、原因を探す

理想と今の回答にズレが見つかったら、なぜそのズレが起きているかを調べます。「EC向け」がAIの回答に出てこないなら、公式サイトにはっきり書かれているか、サービスページで説明しているか、EC企業の導入事例があるか、比較サイトや第三者のメディアでどう紹介されているか、AIがどのURLを引用しているかを確かめます。

自社サイトだけを見ても、原因は分からないことがあります。弊社の調査では、Geminiは化粧品ブランドのキュレルの名前を62回答で挙げていましたが、キュレルのページを引用していたのは、そのうち3回答でした(出典:株式会社FID/Genview「AIが会社名を出すとき、見ているのは自社サイトとは限らない」2026年9月)。AIが何を見ているかは業界でも違い、法律事務所では公的機関や学会、化粧品では口コミやSNSが、ほかの業界より多く引用されていました(出典:株式会社FID/Genview「ChatGPTとGeminiが引用するサイトは、業界でこんなに違う」2026年9月)。

原因が見えて初めて、サービスページを直す、導入事例を足す、FAQを足す、構造化データを入れる、外部の情報の誤りを直してもらう、一次情報を出す、といった施策の順番を決められます。この先の進め方(今の回答の測り方から、自社の情報・第三者の情報の整え方、測り直しまで)は、GEO対策の始め方で解説しています。

よくある質問

Q 理想のAI回答とは何ですか?

A

ChatGPTやGeminiが自社について答えるとき、自社をどう説明してほしいかを、企業の側で決めたものです。何の会社として、誰向けに、どんな課題を解決し、どんな強みで、どんな質問の場面で候補になりたいかを言葉にします。ユーザーの質問に記事がどう答えるか、というコンテンツの側の答えとは別のものです。

Q GEO対策では、最初に構造化データを入れるべきですか?

A

そうとは限りません。先に理想のAI回答を決め、今の回答とのズレを確かめます。そのズレを埋めるのに構造化データが要るなら入れます。どの施策も、理想と今の回答のズレを埋めるために選ぶものです。

Q AIにどう認識されているかは、AIに直接聞けば分かりますか?

A

聞けば、その時点の回答は分かります。ただ、それをAIの中の決まった認識と考えるのは合いません。弊社の実験では、AIに根拠のURLを聞いても、最初の回答の参考リンクと同じURLが返ってきた割合は、Geminiで2%でした。質問・AI・時期で回答は変わるので、決めた質問を何度か聞いて確かめます。

Q 自社サイトの書き方をそろえれば、AIの回答も安定しますか?

A

それだけでは保証されません。AIの回答には、自社サイトのほかに、外部のメディアや比較サイトなどの情報も使われます。まず公式の情報をそろえ、そのうえで外部の情報と、実際のAIの回答とのズレも確かめます。

まとめ

GEO対策には、構造化データ、FAQ、一次情報、コンテンツの改善、外部メディアなど、たくさんの施策があります。最初に決めるのは、そのどれでもなく、AIに自社をどう説明してほしいかという理想のAI回答です。

理想の文を決め、今のAIの回答を何度か聞いて確かめ、どこがずれているかを見ます。ズレの原因を、自社サイトと外部の情報の両方から探してから、施策を選びます。GEO対策全体の考え方は、GEO対策とはで解説しています。

この記事を書いた人

吉田 清登 / Yoshida Kiyoto

株式会社FID 執行役員CMO / Genview プロダクトマネージャー / JECCICA客員講師

通販業界20年以上。再春館製薬所で越境EC・タイチームの管理を経て、現在は Genview の事業責任者。

得意分野のCRMのエッセンスをGEO対策に取り入れたのが Genview です。AI時代の接客は BtoC with AI。主役はお客様で、AIはその間に入った存在です。お客様に伝えると同時に、AIにも自社を正しく伝える。AIを通してどう伝わっているかを、実際に測って確かめています。

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