著者:喜多 陽平(Genview チームリーダー / 株式会社FID) 公開:2026-08-10

企業と自治体で、GEOが別物になるわけではありません。違うのは、重視する目的の比重です。

GEOという言葉は、企業のマーケティングの施策として語られることが多くあります。AIの回答の中で自社が引用・言及されること。比べる候補として挙げられること。そして、商品やサービスを選んでもらうこと。売上や商談につながるので、企業にとっては分かりやすい目的です。

では、自治体にもGEO対策は必要なのか。

自治体では、AIに「選ばれる」ことだけでなく、住民が必要としている正確な公式の情報が、AIの回答の中で正しく扱われることの比重が大きくなります。一方で、観光や移住、地域振興では、自治体どうしが比べられ、AIに候補として挙げられる場面もあります。この記事では、企業と自治体でGEOの目的の比重がどう違うかと、自治体が確かめたいことを整理します。

30秒でわかる結論

  • 弊社の調査では、法律事務所の質問で、AIの引用のうち公的機関・学会のサイトが各回13.7〜19.2%ありました(自治体は観測していません)
  • 行政の手続き・福祉・防災では、「選ばれる」ことより、公式の情報が正しく伝わることの比重が大きくなります
  • 観光・移住・地域振興では、自治体も比べられ、候補として挙げられる側に立ちます
  • 自治体にもGEO対策を考える意味はあります。ただ、情報を整えても、AIの回答が正しくなることまでは保証できません

この記事で扱う範囲

住民がAIに行政のことを聞く場面/企業と自治体の目的の比重の違い/自治体も選ばれる領域/自治体が確かめたいこと(自治体でのAIの回答は、弊社ではまだ観測していません)

住民が、行政のことをAIに聞く場面

住民が行政の情報を調べる方法は、検索エンジンだけとは限らなくなっています。たとえば、次のような質問を ChatGPT や Gemini に直接入力することも考えられます。

  • 「〇〇市で児童手当を申請するには?」
  • 「〇〇市の粗大ごみは、どうやって捨てる?」
  • 「〇〇市にはどんな子育て支援がある?」

このとき、自治体のサイトが検索結果の何位に出ているかだけでなく、AIがどの情報を参照し、どんな内容として住民に伝えるかも、情報を届けるうえで無視できなくなります。

AIは、公的な機関のサイトも引用しています。弊社が5業界で30問を ChatGPT と Gemini に6回ずつ聞いた調査では、法律事務所の質問で、AIの引用のうち公的機関・学会のサイトが各回13.7〜19.2%ありました(出典:株式会社FID/Genview「ChatGPTとGeminiが引用するサイトは、業界でこんなに違う」2026年9月)。自治体への質問は観測していませんが、行政の情報がAIの回答の材料になりうることは、ここからも分かります。

公式の情報があっても、AIの回答で正しく扱われるとは限らない

自治体の公式サイトに最新で分かりやすい情報が載っていても、AIの回答の中で、いつも正しく扱われるとは限りません。第三者のサイトや、古い情報が回答に入ることもありえます。

弊社自身の観察を1つ紹介します。Genview が2026年8月1日に料金を変えたあと、「Genviewとはどんなサービスですか?」をAIに聞き続けると、Gemini は8月5日に新しい料金で答えました。ところが8月6日には前の説明に戻り、種苗業界向けの別サービス「GenVIEW」を引用して、無関係な会社と混同しました。8月7日には混同がなくなっています(出典:株式会社FID/Genview「AIの回答はいつ最新になる?自社の機能・価格変更を2週間観測してみた」2026年8月)。

質問1つで確かめた、1社の観察です。自治体に置き換えると、改正前の制度と今の制度が混ざる、名前の似た別の自治体の情報と取り違える、といったことにあたると考えています。

企業の商品であれば、AIの回答に出てこないことは「機会損失」と言えます。行政のサービスでは、情報が正しく伝わらないと、住民が必要な制度や手続きにたどり着きにくくなるかもしれません。自治体にとってのGEOは、公式の情報の発信元として、AIに使われる可能性も含めて、情報を正確に、分かりやすく、どこでもそろった形に整えておくことだと考えています。

企業と自治体で、GEOの目的の比重はどう違うか

企業と自治体で、GEOの基本の考え方が変わるわけではありません。どちらも、AIの回答の中で自分たちの情報がどう理解され、どう伝えられ、どこが参照されているかを確かめます。違うのは、何を成果として重く見るかです。

企業と自治体で、GEOで重く見るもの(筆者の整理)

企業 自治体(手続き・福祉・防災など) 自治体(観光・移住・地域振興など)
比べる候補に入る 手続きが正しく説明される 比べる候補に入る
おすすめとして紹介される 対象者や条件が誤解されない 地域の特徴が正しく説明される
商品の特徴が正しく説明される 古い制度と今の制度が混ざらない 支援制度などが正しく伝わる
検討や購入につながる 公式の情報が参照される 訪問や移住の検討につながる

企業では「比べられて選ばれること」の比重が大きくなりやすく、自治体の行政の情報では「公式の情報が正しく伝わること」の比重が大きくなりやすい、という違いです。この違いは、きっぱり二つに分かれるものではありません。

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自治体も、比べられて選ばれる側に立つ領域がある

自治体にも、比べられて選ばれる領域があります。たとえば、次のような質問です。

  • 「子育てしやすい自治体は?」
  • 「東京から移住するならどこがおすすめ?」
  • 「起業支援が充実している自治体は?」

こうした質問では、AIが複数の自治体や地域を比べて、候補を挙げることがあります。観光、移住、地域振興、企業誘致などでは、自治体も、比べる候補として正しく理解されることが成果につながります。

「企業は選ばれるためのGEO、自治体は正しい情報を届けるためのGEO」と単純には分けられません。自治体では、行政の情報については正しく伝わることの比重が大きく、観光や移住などでは比べられて選ばれることの比重も大きくなる、と考えています。

自治体のGEOで確かめたいこと

自治体のGEOといっても、特別な技術があるわけではありません。まず確かめたいのは、住民や利用者が実際に聞きそうな質問に対して、AIが自治体の情報をどう扱っているかです。

  • 制度の名前や手続きの中身が、正しく説明されているか
  • 対象者や申請の条件が、正しいか
  • 古い情報が混ざっていないか
  • 公式サイトが、情報源として参照されているか
  • ほかの自治体や第三者の情報と、混同されていないか

1回聞いただけでは判断できないので、同じ質問を何度か聞き、AIごとに分けて記録します。確かめ方はAI検索で自社が出ているか確認する方法|名前・説明・引用元の見方で、AIの回答で情報源がどう示されるかはAI引用とは?AIに引用される仕組みと、引用元になりやすい情報源を15業界の調査で解説で解説しています。進め方の全体は、GEO対策の始め方にまとめています。

GEOを、マーケティングだけで説明できない理由

GEOは、企業のマーケティングの文脈から広がってきた言葉です。けれど、AIが調べものの入口として使われるなら、その影響は商品やサービスの比較だけにとどまりません。行政の手続き、医療、教育、防災など、利用者が正確な情報を必要とする領域でも、AIがどの情報を参照し、どう答えるかは無視できません。

このとき、GEOは「AIに自社をおすすめさせるテクニック」だけでは説明できません。企業でも自治体でも共通するのは、AIにどう理解されているか、どの情報が参照されているか、誤った認識や情報の食い違いがないかを確かめ、必要な情報を整えることです。

情報を整えたからといって、AIがその情報を必ず引用したり、正確な回答を作ったりすることまでは保証できません。GEOはAIの回答を直接コントロールする施策ではなく、AI検索を含む情報の環境の中で、公式の情報が正しく理解され、使われやすい状態を整えていく取り組みだと考えています。GEOそのものについては、GEO対策とはで解説しています。

よくある質問

Q 自治体にもGEO対策は必要ですか?

A

考える意味はあります。住民が行政の手続きや生活の情報をAIに聞く場面では、公式の情報がAIの回答の中で正しく扱われているかを確かめ、必要に応じて情報を整えます。観光や移住、地域振興では、自治体も比べられて候補に挙げられるので、地域の特徴が正しく伝わっているかも確かめます。

Q 企業のGEO対策と、自治体のGEO対策は何が違いますか?

A

GEOそのものは同じで、重く見る目的の比重が違います。企業では、比べる候補に入り、選ばれることの比重が大きくなりやすい。自治体では、手続きや福祉、防災などの公式の情報が正しく伝わることの比重が大きく、観光や移住などでは、企業と同じように選ばれることの比重も大きくなります。

Q 公式サイトの情報を整えれば、AIは行政の情報を正しく答えるようになりますか?

A

正しく答えるようになると保証はできません。弊社が料金を変えたあとも、Gemini は一度新しい料金で答え、翌日には前の説明に戻って、名前の似た別サービスと混同しました。情報を整えたあとも、AIの回答を何度かに分けて確かめます。

まとめ

自治体にもGEO対策を考える意味があります。企業では、比べられて選ばれることが成果につながりやすく、自治体の行政の情報では、公式の情報がAIの回答の中で正しく伝わることの比重が大きくなります。観光や移住、地域振興では、自治体も選ばれる側に立ちます。企業と自治体でGEOが別物なのではなく、重く見る目的の比重が違う、と考えるのが実態に近いと思います。

そして、情報を整えても、AIの回答が正しくなることまでは保証できません。自治体にとっては、AI検索を新しい情報の接点の1つとしてとらえ、公式の情報がどう扱われているかを確かめながら、正確でそろった情報を整えていくことが出発点になります。

この記事を書いた人

喜多 陽平 / Kita Yohei

Genview チームリーダー / 株式会社FID

株式会社FIDにて、CRMツール「MOTENASU」および侍カートの営業・マーケティングを担当。海外のGEO・AI検索に関する最新情報をいち早くキャッチし、日本語で整理・発信することを得意としています。

GEOはまだ国内に一次情報が少ない領域です。海外のレポートや調査を正確に読み解き、日本のビジネス文脈で使えるかたちに届けることが、喜多の役割です。

専門領域:海外GEO・AI検索動向のリサーチ / SaaS・CRMツールの営業・マーケティング / 海外情報の翻訳・整理・発信

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